振動刺激による骨形成促進作用は近年注目を集めており、多数の報告が存在するが、そのメカニズムについて言及したものは少なく、詳細は明らかとなっていない。そこで本研究では遺伝子レベルでの解析によって振動刺激による骨形成促進作用のメカニズムを解明し、それによってより効果的な刺激方法の検討を行い、早期の臨床応用を目指すことを目的とした。 ラットの骨髄細胞から分化誘導を行った骨芽細胞様細胞に対して高周波・低振幅の微小振動刺激(Low-Magnitude High-Frequency(LMHF)Vibration)を行ったところ、実験群ではSMAD等の骨形成促進因子の有意な増加、スクレロスチン等の骨形成抑制因子の有意な減少が認められた。 次にマイクロアレイ法による解析を目的としてマウス骨細胞株MLO-Y4を用いて培養実験を行った。実験群では高周波・低振幅の微小振動刺激(Low-Magnitude High-Frequency(LMHF)Vibration)を与えた。その際予備実験として先の結果を参考に刺激の強さ・時間を変更した3群を設定し、real time RT-PCR法による遺伝子解析を行った結果を比較したが、各群間で有意差は見られなかったため、先の実験と同様の刺激条件を採用した。 刺激後にコントロール・実験両群でマイクロアレイ法による遺伝子発現の定量を行った。その結果n数が少ないという問題はあるものの、振動刺激によって有意に発現が変化した遺伝子は見られなかった。 条件は異なるものの、ラット・プライマリー骨芽細胞では有意差が見られたが、マウス・セルライン骨細胞では有意差が見られないという結果となったが、一般的には骨細胞がメカニカルストレスの受容細胞とされており、今後はプライマリーの骨細胞を用いた検討が必要と考えている。
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