研究課題/領域番号 |
24890170
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
伊藤 慎悟 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (20466535)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | オーファントランスポーター / 定量的標的プロテオミクス / がん治療 |
研究概要 |
本研究の目的は、機能未知のオーファントランスポーターであるSLC22A18の「生体分子機能」と「病態生理的役割」を解明することである。トランスポーターは生体内で複合体を形成して機能することが数多く報告されているため、siRNAを用いたノックダウン法が機能解析には有効であると考え、SLC22A18特異的siRNAの作成並びにsiRNA効果を定量的に評価するための定量PCR法を確立した。一方、メタボローム解析で得られた基質候補から基質を同定する際にはSLC22A18発現系が有効である。そこで、目的遺伝子を効率的にゲノムDNAに挿入できるFlp-In法を用いてSLC22A18安定発現細胞株の樹立を行った。トランスポーター機能は細胞内の発現部位によって解釈が大きく変化するため、局在を明らかにすることが重要である。トランスポーターの細胞内局在を明らかにするには免疫染色法が有用であるが、SLC22A18の細胞内局在解析に用いることができる抗体はないのが現状である。そこで、3種類の市販抗体およびSLC22A18のC末端を標的にした合成ペプチドをウサギに免疫して得られた抗SLC22A18抗体の4種類の抗体の評価を行った。その結果、Caco2細胞、MCF7細胞およびHEPG2細胞の粗膜画分を用いて行ったところ、自作抗体と1種類の市販抗体から約90 kDa付近にバンドを得た。2種類の異なるエピトープを標的とした抗体によって同一のバンドが検出されたことから得られたバンドはSLC22A18タンパク質由来である可能性が高い。従って、SLC22A18は膜画分に発現していること及びSLC22A18は細胞内で何らかの修飾を受けている可能性が高いことが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の計画では1. 内因性SLC22A18高発現株に対するsiRNA導入条件の検討、2. メタボローム解析を用いたSLC22A18タンパク質依存的に変動する内因性物質の同定、3. 肝臓がん細胞株におけるSLC22A18タンパク質発現量と腫瘍形成への関係、4. 抗SLC22A18抗体の作成を計画した。このうち、達成されたのは4の抗体作成である。1、2および3に関しては計画より若干遅れてはいるものの、おおむね実験計画通り順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、Caco2およびHEPG2細胞に対するSLC22A18 siRNA導入条件を確立し、メタボローム解析を行う実験条件を構築する。メタボローム解析と同時に標的プロテオミクスを行い、SLC22A18タンパク質の発現低下によってどのような生体内基質および細胞内タンパク質変動が起きるかを明らかにする。現在得られている2種類の抗体評価を早急に行い、タンパク質発現・局在解析に用いることができるかを明らかにする。一方、マウスにおけるSLC22A18タンパク質発現量と同定した内因性物質の体内動態との関係をsiRNAによるin vivoノックダウン法を用いて解析する。さらに、得られた抗SLC22A8抗体を用いた免疫組織化学的解析によってSLC22A18の組織分布および細胞内局在を明らかにする。最終的にSLC22A18遺伝子欠損マウスを作製し、その表現型、血液および組織を標的プロテオミクス、メタボローム解析および免疫組織化学的解析することによってSLC22A18の輸送機能異常が遺伝子疾患発症機構に関与することを明らかにする。
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