オートファジー (Autophagy) は、細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つである。全ての体細胞内に存在し、ストレス下や低栄養環境、低酸素環境で細胞内コンポーネントのリサイクルを行う。 我々はこれまでの研究で、ヒト膵癌組織(3症例)においてオートファジーが活性化されていることを示した。さらに膵癌細胞株PANC-1およびBxPC-3においてオートファジーが膵癌の発育に積極的に貢献していることがわかった。また抗癌剤ゲムシタビンおよび5-FUはPANC-1およびBxPC-3にさらに強いオートファジーを誘導することを示した。このオートファジーをオートファジー阻害薬クロロキンで阻害すると、抗癌剤の殺細胞効果が増強された。つまりオートファジーは細胞保護的に働いていることを明らかにした。つまりオートファジーを抑制することが、新しい膵癌治療法となる可能性を示した。 これをさらに解析するため、膵癌細胞株に対してオートファジー関連遺伝子のATG5に対するsiRNAを導入してオートファジーを抑制する実験系の確立を行っている。さらに抗癌剤を用いた解析へと進み、オートファジー抑制による抗癌剤殺細胞効果の増強を確認する。 我々はさらに膵癌患者における、オートファジーの誘導と予後をprospectiveに解析することとした。2012年4月から2014年3月まで32例の通常型膵癌に対して切除手術を行った。この症例の切除検体(癌部および通常膵実質部)を用いて、オートファゴゾームのマーカーであるLC3に対するウェスタンブロッティングを行っている。通常膵実質部に比べて癌部でLC3の発現が亢進している傾向があるが、条件設定にやや難渋している。今後予後との関連を解析する。
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