われわれは口腔扁平上皮がん(OSCC)細胞株を用い、口腔癌治療のKey drugであるCDDPを用い、CDDP耐性株を樹立した後、その解析結果にてOSCCのCDDP耐性におけるアポトーシス阻害タンパクであるcIAP2の重要性を提示した。また、実際の口腔癌患者において、cIAP2が高発現しているほど、CDDPを使用した放射線化学療法の治療効果が低くなり、予後不良となることを見いだした。 われわれは以前、OSCCにおいてcIAP2の発現が、もう一つのKey drugである5-FUに対して耐性をもたらし、5-FU感受性因子ならびに予後因子となることを報告した。これらのことはcIAP2が多剤耐性の標的因子となる可能性を示している。実際、5-FU耐性OSCC細胞株はCDDPに対しても交差耐性を獲得しており、cIAP2の発現を低下させることにより、CDDP感受性も増加することを発表した。また、プラスミドを導入し、cIAP群が高発現するOSCC細胞株を樹立したところ、複数の抗がん剤に対し、抵抗性を示すようになった。難治性のOSCC患者においてcIAP2を標的とし、その発現を抑制することにより、化学放射線療法の効果を増強させ、生存率を改善することが可能になるかもしれない。今後は、現在臨床治験中であるIAP阻害薬を用いた抗がん剤耐性解除の研究を行う予定である。 以上の結果は2012年および2013年の頭頸部癌学会および日本癌学会で発表しており、また、現在論文として執筆中である。
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