研究概要 |
口腔扁平上皮癌は,患者のQOLと生命を脅かす重大な疾患です。初診時には約30% の患者においてリンパ節転移がみられ,リンパ節転移の存在は患者の予後と強く相関していると報告されている(Beenken et al.Head Neck, 1999. 21(2): p.124-30)。したがって、OSCCの転移に関わる重要な分子経路を解明することは、腫瘍の悪性形質に関わるメカニズムの解明につながり、患者の生存率を向上させる効果的な治療法の開発のために極めて重要であると考える。一方、転移のメカニズムを詳細に理解するためには、癌のタイプごとにヒトの転移プロセスと類似した動態を示すモデルの存在が不可欠である。そこで、申請者は、GFPを導入した口腔扁平上皮癌細胞株を用いて高転移株・肺転移株を樹立することに成功した。 申請者が樹立した高転移株を用いて新たに転移能増強に関わる分子に関してマイクロアレイ解析を行ったところ、高転移株では、分子A、肺転移株では、分子Bの発現が著しく上昇していることが確認できた。そこで、大変興味深い事には、分子A 、分子Bの発現上昇は生命予後の悪化に強く関連しているとの報告がある。しかし口腔癌において、いまだ転移と予後との相関を示唆する報告はない。以上より、現在マイクロアレイで高発現上昇をみとめる分子を口腔扁平上皮癌患者におけるリンパ節転移に関する予測、あるいは診断マーカーとして使用できるか、また分子標的とする革新的な癌治療法開発につなげるこができるか解明中である。
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