骨髄系腫瘍では、疾患分類に関わらず共通して、DNAのメチル化制御に関わるTET2 遺伝子に機能低下/欠失型の変異が高率に生じており、『疾患群全体に共通する腫瘍化メカニズム』の存在が示唆されている。本研究では、TET2 低発現マウスの表現型を手掛かりとし て、骨髄系腫瘍共通の腫瘍化メカニズムを解明することを目的として研究を進めている。 野生型マウス、TET2 低発現マウスの2 群の多能性前駆細胞における遺伝子発現パターンをマイクロアレイによって比較した。多能前駆細胞分画は非常に希少分画であるため、本研究には大量のマウス骨髄細胞が必要である。B6系統のTET2低発現マウスは生後の死亡率が高いため、当初TET低発現マウス胎生14.5日の肝細胞を移植したマウスを多数作成して細胞純化を試みたが十分な細胞数が得られなかった。マウス系統を雑種とすることで死亡率を下げ、使用するセルソーターをより高性能なものに変更したことにより十分な細胞数が得られた。現在マイクロアレイデータの詳細な解析を行っている。 骨髄系腫瘍のうち骨髄増殖性腫瘍では、JAK2の活性化型遺伝子変異がTET2遺伝子変異と共存している症例があるが、TET2変異の疾患における意義は不明であった。本研究では、マウスモデルを用いてJAK2遺伝子変異とTET2異常の協調についても検討を行った。
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