研究課題/領域番号 |
24890178
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
赤崎 雄一 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00631920)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 老化 / 代謝内科学 / 骨格筋 |
研究概要 |
老化による骨格筋喪失(サルコペニア)により老人においては活動性や代謝能が低下する。しかしながら筋萎縮を改善するための効果的な治療法は、現時点では確立されていない。一方、Aktシグナル系は筋肉の増殖や肥大に関わっており、動物実験において、高齢動物では同化刺激に対するAktシグナル伝達経路が抑制されている事が報告されている。以上より、Aktを直接活性化することで筋萎縮を改善し、老化に伴う活動性低下や代謝異常を改善させることができるかどうか検討した。 高齢マウス(12ヶ月齢)に対して4週間、骨格筋特異的にAkt1遺伝子を強発現させた。Akt1強発現により、筋力は高齢コントロール群に比較し改善していた。高齢マウスでは、若年マウス(3ヶ月齢)に比較すると、グルコース負荷試験、インスリン抵抗性試験において代謝能が低下していたが、筋肥大により糖代謝能は改善した。高齢マウスでは、脂肪肝を呈していたが、4週間の骨格筋肥大により、脂肪肝の改善が見られた。 以上のデータから、高齢マウスでは、筋力低下、糖代謝低下、脂肪肝がみられたが、骨格筋肥大により、これらのデータが改善することが示唆された。今後、これらに対する、組織学的、生化学的な病態解析を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
老化に伴う筋萎縮に伴う活動性・代謝能低下に対する筋肉特異的Akt1活性化が及ぼす影響を生理学的に検討。 a. 筋力測定: コンピューター制御下筋力測定装置を用いて行い、12ヶ月齢は、12週齢に比較すると、筋力が低下しており、骨格筋特異的Akt遺伝子強発現により、12ヶ月齢においても筋力が改善していた。 b. 糖代謝能評価:糖負荷試験、インスリン抵抗性試験により、12ヶ月齢では、糖代謝能の低下を認めたが、骨格筋特異的Akt遺伝子強発現により、糖代謝能は改善していた。 以上により、若年齢(12週齢)と高齢(12ヶ月齢)を比較し、骨格筋特異的Akt遺伝子強発現による骨格筋肥大が代謝能の改善をきたしたことを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
高齢マウスでは、筋力低下、糖代謝低下、脂肪肝がみられたが、骨格筋肥大により、これらのデータが改善することが示唆された。今後、これらに対する、組織学的、生化学的な病態解析を検討する予定である。 骨格筋(ヒラメ筋:type I型線維、腓腹筋:type IIb型線維)については、type I, type IIa, type IIbの筋線維型を同定するために、モノクローナル抗体で蛍光染色を行う。 肝臓は、肝臓オイルレッドO染色を行ない、脂肪滴の沈着を検出する。脂肪は、HE染色を行ない、脂肪滴の大きさを定量解析する。 蛋白活性は蛋白を筋肉(腓腹筋)から抽出した後、ウェスタンブロットを行う。全てのリン酸化の程度は、デンシトメトリー法で数値化し、比較検討する。 以上により、若年齢(12週齢)と高齢(12ヶ月齢)を比較し、骨格筋特異的Akt遺伝子強発現による骨格筋肥大が代謝能の改善をきたした機序について、組織学的、生化学的評価を行う。
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