本年度も昨年度に引き続きLOTUSの神経突起伸長作用機構について解析した。申請者らはLOTUSが網膜神経節細胞の神経突起を伸長させること、およびこの神経突起伸長作用はLOTUSの結合分子Nogo receptor-1(NgR1)以外の未同定分子を介することを見出した。LOTUSの神経突起伸長作用に関わる分子を同定するため、LOTUS相互作用分子を探索するための3種の手法を検討した。 (1) アルカリホスファターゼ(AP)融合のLOTUS(AP-LOTUS)が結合する相互作用分子をコードするcDNAクローンを単離するために、NgR1のノックアウト(KO)マウスの網膜神経節細胞に発現するcDNAライブラリーを作製する。(2) ストレプトアビジン結合タンパク質(SBP)融合のLOTUS(SBP-LOTUS)精製タンパク質を結合させたNgR1のKOマウスの培養網膜神経節細胞から、SBP-LOTUSと相互作用する分子を精製する。(3) AP-LOTUSが結合し神経突起を促進させる細胞株からSBP-LOTUS安定発現細胞株を樹立し、樹立したSBP-LOTUS安定発現細胞株からSBP-LOTUSと相互作用する分子を精製する。 (1)に関しては当該網膜神経節細胞mRNAをcDNAライブラリー作製に必要とされる量の約20%収集した。(2)に関しては分泌型SBP-LOTUS発現プラスミドの構築が完了し、SBP-LOTUSタンパク質を精製した。(3)に関しては膜結合型SBP-LOTUS発現プラスミドの構築が完了した。一方、レチノイン酸により神経分化させたマウス神経芽細胞腫由来の細胞株Neuro2Aは、AP-LOTUSの結合が認められること、およびAP-LOTUSにより神経突起伸長が誘起されることを明らかにした。この結果は、神経分化させたNeuro2AにLOTUSの神経突起伸長に関わる分子が発現および機能していることを示唆する。そこで、申請者はNeuro2AのSBP-LOTUS安定発現株を樹立した。現在、これらの3種の手法を用いてLOTUSの神経突起伸長作用に関わる分子を同定するための実験を遂行中である。
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