本研究課題では、褥瘡創面に使用されていたガーゼ゙からタンパク質を抽出し、ウェスタンブロット法を用いて、抗FN抗体(4種類)で検出した後、褥瘡の肉芽組織の状態と抗FN抗体の分解状態に関連がないか検討を行った。分析の結果、対象者の褥瘡創面によって抗FN抗体の検出状態に違いを認めた。つまり、肉芽組織の状態によってFNの分解状態に違いがあることが示された。使用した抗体のうち、FNのN末端を認識する抗体(以下、MAB1926)が、上皮化の段階や治癒が遅延している褥瘡創面に関与している可能性があることの示唆を得た。上皮化の段階にある褥瘡創面から高分子のMAB1956が検出され、治癒が遅延しているが肉眼的には肉芽組織の状態が良好に見える褥瘡創面からも高分子のMAB1926が検出された。他の抗FN抗体から検出されたFNの分解状態から、治癒過程の段階に関連があるか調べたが明確になる結果を見出すことはできなかった。しかしながら、褥瘡創面から、MAB1926が検出された場合、治癒過程の段階に関係しているのではないかと推察される。 分析数が10名分と少ないため、今後は、一般化できるよう分析数を増やすとともに、看護師が褥瘡の治癒過程を判断する材料に活用可能かの検討を行う必要がある。
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