研究課題
現在、我が国では年間約100万人が死亡し、そのうち約17万人が変死として扱われている。変死のうち、検死、検案によって事件性が疑われるか、又は死因不明のものについて司法解剖が行われ、詳細な死因究明が行われる。しかしながら、司法解剖が行われるのは10%程度であり、死因不詳として処理される案件も多い。死因の究明は、事件解決や遺族のためのみに留まらず、将来の犯罪、事件の予防においても重要な意味をもつ。従って、簡便な試験法により死因解明の精度向上が重要であると考えられる。本研究の目的は、ポリアミン及びその代謝物を用いて、外表から分からない臓器損傷を、簡便で迅速な方法で診断するための新規試験法の開発である。司法解剖検体中のポリアミン濃度を測定した結果、飲酒者では血中のポリアミン濃度が非飲酒者に比べて高かった。肝臓細胞モデルとしてHepG2培養細胞系を用いて検討を行った結果、エタノール代謝物であるアセトアルデヒド(AcH)により細胞増殖が阻害された。AcH暴露細胞ではスペルミンが減少し、プトレスシン及びスペルミジン量が増加していた。その際、ポリアミンの生合成酵素及びアセチル化酵素は増加していなかった。一方、スペルミンオキシダーゼ(SMO)の活性、mRNA、蛋白質量はAcHにより増加していた。SMO活性依存的に毒性物質アクロレインが生成しており、SMOの発現量を減少させた細胞では、AcHの毒性発現が減少した。本研究の結果、AcHはスペルミンオキシダーゼを転写レベルで誘導し、その結果、スペルミンが酸化されスペルミジン、プトレスシンが増加したと考えられた。また、SMOによりスペルミンが酸化される際、アクロレインが生成し、細胞毒性を示すと考えられた。SMO及びポリアミン、アクロレイン量を測定することにより、エタノール摂取及びそれに伴う肝臓組織の損傷を検出することが出来る可能性が示唆された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Toxicology
巻: 310 ページ: 1-7
10.1016/j.tox.2013.05.008
http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/hoi/