研究概要 |
以下の実験を行った。 ①細胞レベルの検討:初代培養した後根神経節およびシュワン細胞を観察し、細胞に特有のピークを認めるか観察した。ラマン顕微鏡はLabRam ARAMIS (Horiba Jobin-Yvon )を使用した。②組織レベルの検討:6週齢SDラットの正常な坐骨神経を採取し、長軸切片を作製し、ラマン顕微鏡で観察し、培養細胞のピークとの比較を行った。次に、5分間結紮した後、解除した圧挫損傷モデルを作製し、術後7, 14, 21, 28日目に末梢神経を摘出し、長軸切片を作製した。損傷部から遠位5mmの部位をラマン顕微鏡で観察した。連続切片を免疫組織化学染色により、軸索、髄鞘のマーカーを使用し、ラマンのピーク変化との相違を比較検討した。 結果として、①後根神経節およびシュワン細胞のピークは2886, 2940 cm-1、2851, 2889, 2909 cm-1であり、異なるパターンを有していた。②正常末梢神経から観察された波形は、培養細胞で観察されたピーク変化に依存した波形と一致した。損傷坐骨神経の経時的観察によると、着目した2853, 2885, 2940 mc-1のピーク比が変化した。この変化は免疫組織化学染色の結果と類似した変化をしていた。 以上の結果から、ラマン分光顕微鏡による非染色な観察により、末梢神経の細胞および組織から有用なピーク変化をとらえることができた。今後はより実用化できる撮影方法の工夫を行うことで、非侵襲的な画像診断法につながる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
まだ未解決の問題であるラマンスペクトル結果と他の解析法との比較検討を行っていく。 a.ラマンスペクトル変化が他の形態学的変化とどのように相関するか、あるいは他の形態学的変化に比べ、より再生現象に高い感受性を有するかを明らかにするため、従来の形態学的手法との比較検討を行う。 b.電気生理学的評価との再生現象の測定感受性を比較するため、ラットの腓骨筋から神経伝導速度を解析し、同様に比較検討する。 c.生化学的評価との相違を明らかにするため、神経栄養因子(BDNF, NGF, GDNF, IGF-1)の遺伝子発現をreal time RT-PCRで解析し、ラマンスペクトルでのピークとの時間的反応性を検討する。 d.MRIでの画像解析法とのコンプライアンスを明らかにするため、ラットの末梢神経損傷モデルから拡散テンソル法による撮像からの定量解析結果を比較する。
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