人工心肺に伴う血液希釈、および抗血小板薬による血小板血栓形成能への関連が、健常人血液を使用した希釈モデルから示唆された。コラーゲン上に形成された血栓のvideo-microscopeによる観察(600s-1)では、血小板粘着能よりも凝集過程が大きく阻害され、血栓強度が低下していることが確認できた。血液希釈率を増加させると、それに伴い血管内を流れる赤血球数も低下する。そのため、通常時に比較して、赤血球が血管壁に衝突することで発生するズリ応力が減少していると考えられる。 コラーゲン、およびtissue factorを塗布したcapillary上での観察では、抗トロンビン薬(ダビガトラン)によりトロンビン生成を抑制すると血栓形成能が抗血小板薬(プラスグレル)と相加的に抑制されることが、流体下に確認された。臨床における、経口抗トロンビン薬と抗血小板薬の併用患者における出血リスクに合致する所見であった。人工心肺患者の検体を用いたモデルでも、希釈モデルと同様の傾向を示したが、患者個体差間の違いも示唆された。 本結果は、本フローチャンバー装置の臨床応用にむけての基盤的データとなった。
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