変形性膝関節症は、高齢者に多い膝の疼痛の原因疾患であることが多く、高齢者のADLやQOLを低下させる大きな要因である。この膝の疼痛の根治的治療方法として、人工膝関節全置換術が代表的である。しかし、患者は疼痛を取り除きADLやQOLを高めることを目的として手術を受けるが、手術後の創部が治癒し、退院する時期に至っても、消失しない下肢の疼痛が存在することが、本研究の前に実施した実態調査で明らかになった。したがって、本研究の目的は、人工膝関節全置換術術後患者の下肢の疼痛を緩和する看護技術として足浴を用い、足浴による疼痛の緩和効果について生理学的・心理学的に評価を行うことである。なお生理学的指標として、唾液αアミラーゼ、s-IgA、コルチゾール、3mTUGを用い、心理学的指標として阪本(1992)らが作成した日本語改訂版マギル質問票を用いた聞き取り調査により疼痛の緩和効果を評価した。 今年度は、人工膝関節置換術後2週間を経過した対象者10名に対し、リハビリテーション前に足浴を行う足浴ケアと、足浴を行わない通常ケアを各々1回ずつ期間をおいてうける。各々のケア時の前後で指標を測定し、足浴の有無による指標の変化について統計的に分析し、ケアの有無による差異について検討した。現在のところ症例数も少なくデータにばらつきが多かったため、有意差の認められた項目はなかった。今後は症例数を増やして検討を続けていく。
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