[研究目的]術後2週目以降の人工膝関節全置換術術(以下TKA)後患者に対し、下腿疼痛を緩和する看護技術として温罨法として足浴を用い、足浴による疼痛の緩和効果を心理的・生理的指標を用いて評価することを目的とした。 [研究方法]研究デザイン:クロスオーバーデザイン。対象:研究協力の同意が得られた変形性膝関節症によりTKAを受けた女性患者21名。ケア方法:足底から約30cmまでの下腿を38~42℃で15分間温める足浴を行った。測定項目:年齢・BMI・心理的指標として改変型日本語マギル痛み質問票(疼痛部位;疼痛感覚を表現する疼痛表現言語内容および数;疼痛強度VAS)・生理的指標として唾液コルチゾール濃度、唾液アミラーゼ濃度、唾液分泌型免疫グロブリンA濃度および分泌率・歩行機能指標として3m Timed up and Go test(3mTUG)。測定時期:各ケア前後で2回測定した。 [分析方法]疼痛部位と疼痛表現内容は二項分布で、VAS、生理的指標と3mTUGは一般線形モデルによりケア効果と時期効果を検定した。有意確率p<0.05を統計学的有意差あり、0.05≦p<0.10を有意傾向ありとした。 [結果]心理的指標のうち疼痛表現言語数で、時期効果(p=0.04)とともに足浴ケアによる疼痛の緩和効果(p<0.005)が認められた。また膝蓋部の疼痛が足浴ケアで疼痛が緩和される傾向(p=0.06)が示され、疼痛強度VASでも足浴ケアで疼痛が緩和される傾向(p=0.07)が示された。生理的指標および3mTUGでケア効果は認められなかった。 [考察]足浴ケアによって、心理的指標のうち疼痛表現言語数、膝蓋部の疼痛、VASで疼痛の緩和効果が認められ、足浴を活用した温罨法は疼痛の緩和に効果的であることを明らかにした。今後は、疼痛の緩和効果を捉える生理的指標の開発が課題である。
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