非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、特に非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)進展機序には、マクロファージ(Mφ)・ スカベンジャー受容体(SR)が重要な役割を担っていると考えられる。その関与を明らかにするため、主要因子の組織局在同定を軸に本研究プロジェクトを立案した。具体的にはクッパー細胞および活性化星細胞におけるSRの発現が、炎症性サイトカインや増殖因子をメディエイターとした炎症性・線維化プロセスに如何なる影響を与えうるのかについて、ヒトNASH/NAFLD病理検体を対象とした検討を計画した。 昨年度から収集・組織診断の再検討をすすめてきたNASH/NAFLD病理検体に対し、以下の免疫組織化学的検索を行った。数種のSR、酸化ストレスの指標でありSRのリガンドとして重要な過酸化リン脂質(oxPL)、そしてNASH/NAFLD病態における主要な炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(TNF-α)について、免疫組織化学単染色/二重染色を行い、これら因子の組織発現・局在と相互の関連性について検討した。 oxPLは、脂肪化肝細胞およびMφ/クッパー細胞に局在が観察され、脂肪化肝細胞の酸化傷害および血中酸化脂質の取り込み・細胞内蓄積を反映すると考えられた。oxPL陽性細胞数は組織学的傷害度と有意な相関を示した。一方TNF-αは、Mφ/クッパー細胞に発現しており、陽性細胞数は組織学的傷害度および血中肝酵素値と相関した。TNF-α陽性細胞数はoxPL陽性細胞数との間にも有意な相関を示し、TNF-α発現Mφ/クッパー細胞の多くがoxPL局在を伴っていた。 以上の研究結果は、NASH/NAFLD肝組織におけるoxPL局在とTNF-α発現との密接な関連性を明らかにし、両因子の相互連関による酸化ストレスの増強を介したNAFLD/NASH発症・進展プロセスへの関与を示しているものと考えられた。
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