研究概要 |
当科ではこれまでに10種類の膵癌細胞株(PANC1, PK1, PK8, PK9, CfPAC1, BxPC3, Capan-1, Capan-2, MIAPaCa2, AsPC1)においてRT-PCR, Western blotting, 免疫細胞染を行い,膵癌細胞株におけるMUC16/mesothelin発現を解析した結果,PK9, CfPAC1はMUC16, mesothelinともにRNAおよび蛋白レベルにおいて高発現することを確認した。そのため,この2種の膵癌細胞株に対してshRNAを用いてリポフェクタミン法にてまずMUC16単独,mesothelin単独抑制膵癌細胞株を作成した。さらにそれぞれをmesothelin shRNA, MUC16 shRNAを使用してdouble-knockdownを行った。こうすることで膵癌細胞株PK9, CfPAC1のMUC16単独,mesothelin単独,およびMUC16/mesothelin double knockdown膵癌細胞株を樹立した。樹立したMUC16抑制膵癌細胞株,mesothelin抑制膵癌細胞株,およびMUC16/mesothelin double knockdown膵癌細胞株(PK9, CfPAC1)をGeneChip Human U133 plus 2.0 arrayを用いて網羅的遺伝子発現解析を行った。現在vector control導入株とMUC16抑制株,mesothelin抑制株,およびMUC16/mesothelin double knockdown膵癌細胞株でそれぞれ比較し,下流遺伝子を探索している。これにより、既にこれまでの研究で明らかとしている膵癌における、MUC16とmesothelinの浸潤過程に関与するpathwayが明らかとなり、新規治療ターゲットとしての重要な基盤となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度はshRNAを用いたMUC16単独,mesothelin単独,およびMUC16,mesothelin double knockdown膵癌細胞株の樹立を行った。引き続いてそれらの細胞株を用いた網羅的遺伝子発現解析を行っている。本研究は多大な労力と時間のかかる作業である。また、その結果は慎重に解析し、平成25年度予定の研究へと繋がる予定である。それと平行し、MUC16,mesothelinによる膵癌の浸潤能増強のメカニズムを解明することを目的に、樹立したMUC16単独、mesothelin単独、およびMUC16,mesothelin double knockdown膵癌細胞株を用いて、Epithelial-mesenchymal transition(EMT)関連マーカーとして知られる上皮系マーカー(E-cadherin, α-catenin),間葉系マーカー(N-cadherin, Vimentin)およびそのmaster regulatorであるSail, Slug, Twist, SIP1の発現の亢進または減弱についてリアルタイムRT-PCR、Western blotting法を用いた検討を始めている。
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