24年度は、先行研究で提案した推計法を用いて、虚血性心疾患の基準改訂の影響を補正した虚血性心疾患死亡数の年次推移曲線の推計を行った上、脂質系検査値の世代間差と虚血性心疾患および脳卒中死亡者の経年推移について比較した。結果は、1980年代では世代毎での両疾患とも死亡者の有意差が認められたものの、1990年代以降は有意な相関は認められなかった。これは、高度医療の発達による延命効果によって、死亡数という形では明確な差が生まれにくくなっていることが考えられた。 この結果を受けて、死亡数ではなく患者数での検討が必要であると推察されたことから、脂質系検査値の世代間差と両疾患の患者数との相関について、推計式を用いた患者数の妥当性の確認と実際の相関の有無について検討を行った。患者数の元データについては、厚生労働省が実施する患者調査結果を用いた。推計式より算出した虚血性心疾患及び脳卒中の患者数については、文献及び統計資料にて比較検討した結果、妥当性が確保できたと考える。また、脂質系検査値の世代間差と虚血性心疾患および脳卒中患者数の経年推移について比較したところ、死亡者数の経年推移では認められなかった有意な相関が概ね確認された。 次に、NIPPON DATAによって報告されている血清総コレステロール値と虚血性心疾患および脳卒中発症の相対危険度を参考に、脂質系検査値の世代間差が及ぼす住民の健康リスクへの影響について検討した結果、脂質系検査値の集団平均値が若い世代ほど高値を示していることに比例し、虚血性心疾患と脳卒中発症のリスクも高まっていることが明らかになった。
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