研究課題
本年度は、①野生型(WT)および破骨細胞特異的p130Cas遺伝子欠損(p130Cas cKO)マウス由来の骨髄細胞から破骨細胞を誘導し、p130Casの下流分子について検討を行った。また、②p130Casと相同性の高いCasLの遺伝子欠損マウスとp130Cas cKOマウスとを交配し、表現型の解析を行った。①p130Cas cKO由来破骨細胞では骨吸収能の指標となるアクチンリング形成の抑制、細胞あたりの核数の減少、波状縁の形成不全が認められた。また、各マウス由来破骨細胞をプレート上に播種し、ベータ3インテグリンのリン酸化、およびインテグリン下流のシグナル因子として重要なc-SrcおよびPyk2のリン酸化について検討したが両群に差はなかった。G-LISAアッセイの結果からp130Cas cKOではアクチン重合に関わるRac1の活性が減少している事が明らかになったため、各マウス由来破骨細胞の蛍光免疫染色を行ったところ、Rac1とその下流分子Arp3の細胞内局在が、WTではアクチンリングと共局在するのに対し、p130Cas cKOでは細胞内全体に分布していた。次に 各マウス由来破骨細胞における各分子の相互作用について検討したところ、Rac1の活性調節因子Dock5は、WTではc-SrcやPyk2と会合するが、p130Cas cKOでは会合せず、c-SrcとPyk2との会合も減弱していた。さらに、p130Cas cKO由来破骨細胞に野生型Casを発現させると、c-SrcとPyk2の会合と骨吸収能が回復した。一方、同様の実験でPyk2との会合ができないSH3ドメイン欠失型Casを発現させてもDock5はCasと会合せず、骨吸収能は回復しなかった。②p130Cas cKOマウスとCasLの遺伝子欠損マウスとを交配して得た個体の骨形態計測を行ったが、p130Cas cKOマウスと比較して明らかな表現形の相違は認められなかった。以上の事からp130Casはc-Src、Pyk2さらにDock5と複合体を形成し、Rac1-Arp3シグナルを活性化させることにより破骨細胞の骨吸収能を制御していると考えられた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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