平成25年度は、平成24年度の調査結果を基に「自殺未遂者と精神医療を繋ぐために救急医療に携わる看護師が実際どのように対象者の状態を把握し、他職種と連携しているかを明確にする」ことを目的に質問紙調査を実施した。その結果、自殺未遂者の把握は本人の訴えや家族からの話を中心に行っていること、他職種との連携は、サマリの作成などを通して精神科医療機関に自殺未遂者に関する情報提供を行っていることが分かった。一方で、自殺未遂者に対する精神的ケアなどについては、ほとんど行われておらず、医師から指示のあった医療処置にみ行っていると回答した者がほとんどだった。加えて、自殺企図を繰り返す自殺未遂者への対応に困難さを感じ、精神科との連携の必要性を感じている看護スタッフが多いことも分かった。また、先行研究より自殺未遂者へ対応する救急部看護師へは、自殺未遂者へ適切に対応するために、研修や学習会などの教育的支援と、自殺未遂者へ対応する際の心理的支援が必要であるとされている。本調査の結果でも、教育的支援があると回答した者の方が、環境調整や他職種との連携など適切な援助を行う割合が高いことが示唆された。しかし、教育的支援に関しては、自殺未遂者への対応に関する研修などの教育の機会がない、マニュアルがない、アセスメントツールがないと回答した者がほとんどであり、それらの支援があると回答した者でさえ、時間がない、必要性を感じない、活用方法が分からないなど十分に活用できていない可能性が示唆された。心理的支援については、同じ部署の医師や先輩看護師、同僚が話を聞くことで対応していることが多く、組織として特別に支援していることはほとんどなかった。自殺未遂者の再企図防止のために、対象者を効果的に精神科医療へ繋ぐことができるよう、救急部看護師への教育的・心理的支援を充実させることと、その必要性を理解してもらうことが重要である。
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