研究課題
本研究はGLP-1(glucagon-like peptide 1)等のインクレチンホルモンの、膵β細胞に対する作用機序解明を目的に立案した。平成25年度は以下の実験を計画した。①GIP(Glucose-dependent insulinotropic polypeptide)が膵β細胞背景電流に関与するかどうかの検討。②PACAP(pituitary adenylate cyclase-actibating)の背景電流への作用。③グルコース(G)代謝がTrpm2チャネルに影響を与えるかどうかの検討。④背景電流に対するGIP用量反応曲線の作成、GIP依存性チャネルの同定、シグナル解析。⑤膵β細胞に対するGLP-1およびGIP同時投与の検討。⑥細胞内Ca2+濃度測定による検討。⑦2型糖尿病モデル動物による検討。①④の結果:野生型マウスでは、GIP刺激にて有意な背景電流の増加が観察されたが、Trpm2KOマウスではその効果は消失した。GIPの作用は1 pMより観察され、100 pMで最大となり、それ以上の濃度では効果は減弱した。②の結果:100 pM PACAPにより有意な背景電流の増加が観察された。③の結果:16.6 mM G刺激により有意な背景電流の増加が観察され、電子伝達系ブロッカー併用、EPACインヒビター併用、およびTrpm2KOマウスではその効果は消失した。浸透圧の関与は否定的であった。⑤の結果:Trpm2チャネルに対するGLP-1およびGIP同時投与による影響は観察されなかった。⑥の結果:100 pM GLP-1投与により膵β細胞グルコース刺激インスリン分泌における第1相が増加することが明らかとなった。⑦に代わり、Rap1インヒビター(GGTI298)のTrpm2電流に与える影響を検討した。GGTI298はGおよびインクレチンホルモンのTrpm2電流増加作用を打ち消した。グルコース代謝および生理的濃度のインクレチンホルモンは、EPAC-Rap1を介してTrpm2電流を増加させ、インスリン分泌を増加させることが明らかとなった。グルコース刺激インスリン分泌の新たな機序、生理的濃度のGLP-1の作用機序を解明した点で、今回の発見の意義は大きい。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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10.2337/db13-1868