研究概要 |
本研究では、血中循環がん遺伝子のがんバイオマーカーとしての新しい臨床的有用性を見出すことを目的として、下記の研究項目を計画し、昨年度までに、(1), (2)に関して研究を実施した。 (1).動物モデル実験系の構築。(2).血中循環がん遺伝子と血中循環がん細胞の検出系の構築。(3).血中循環がん遺伝子と血中循環がん細胞の体内動態における比較検証。 これまでに、ヒトがん培養細胞株をラット静脈接種により血液中に循環させて経時的に採血し、がん細胞数を計測するがん細胞静脈接種モデルを新たに構築した。この動物モデルは、これまで解析が困難であった血中循環がん遺伝子や血中循環がん細胞の基礎的研究を推進する新しいin vivo実験系として有用性が高いと考えられる。 また、本研究成果により血中循環がん遺伝子は、これまで考えられているがんの存否マーカーとしての臨床的有用性だけではなく、がんの悪性度を診断することができるバイオマーカーとして、新たな臨床的有用性が高まることが期待される。そこで我々は臨床応用に向けて、がん種特異的なメチル化遺伝子マーカーの探索を開始しており、これまでに肝細胞癌, 大腸癌, 脳腫瘍等の複数のがん種で特異的メチル化遺伝子マーカーの単離に成功している(特許出願済)。また、子宮頸がんに関しては、実際に約50検体の臨床検体を用いて、がん特異的メチル化遺伝子マーカーにより子宮頸部前癌病変の悪性度予測ができることを新たに報告した(Int. J. Gynecol. Cancer, 23, 234-243, 2013)。このように、本研究課題は当初の計画通りに研究が進められている。さらに、がんの存否マーカーやがんの悪性度評価等の臨床応用に向けた研究も開始し、既にがん種特異的なメチル化遺伝子マーカーを単離していることから、本研究成果をもとにした新しいがん診断法の可能性が期待できる。
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