研究課題/領域番号 |
24890224
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
藤原 亮一 北里大学, 薬学部, 助教 (40631643)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | ビリルビン代謝 / UGT1A1 / 新生児黄疸 / 母乳 |
研究概要 |
本年度は、母乳性黄疸の発症メカニズムの解明を目的として、小腸上皮細胞であるCaco-2細胞や黄疸モデルマウス(ヒト化UGT1マウス)を用い、グルコース処置によるUGT1A1発現量の影響を検討した。カリフォルニア大学サンディエゴ校よりヒト化UGT1マウスを入手し、黄疸を発症する新生児黄疸マウスを作製した。経口的にグルコース溶液を新生児マウスに投与した後、肝臓と小腸を回収した。各臓器よりRNAを抽出しcDNAを合成した後、RT-PCRおよびリアルタイムPCRを行い、UGT1A1の発現量を測定した。グルコース投与後1時間においてはUGT1A1の発現量に変化は認められなかったが、投与後2時間においては小腸におけるUGT1A1の誘導が認められた。Caco-2細胞を低グルコースおよび高グルコース培地で3、5、7日間培養した結果、高グルコース培地で培養したCaco-2細胞において有意に高いUGT1A1の発現が認められた。以上の結果より、新生児期のカロリー摂取量の違いは小腸におけるUGT1A1発現量に影響を及ぼし、母乳性黄疸を発症させる原因となっていることを明らかにした。 本研究ではさらに、母乳成分によるUGT1A1酵素活性の阻害について検討した。母乳に多く含まれる15種類の脂肪酸について検討した結果、特にオレイン酸、リノール酸、DHAは強くUGT1A1を阻害することを明らかにした。以上のことより、母乳に含まれるオレイン酸、リノール酸、DHAは母乳摂取新生児にUGT1A1によるビリルビン代謝を阻害し、黄疸発症を誘導している可能性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、母乳性黄疸の発症メカニズムの解明と、母乳成分によるUGT1A1酵素活性への阻害効果について明らかにすることを目的としていた。新生児期のカロリー摂取量に着目し、本年度はグルコース溶液によるUGT1A1発現調節について検討した。マウスを用いたin vivo試験、培養細胞を用いたin vitro試験の両方において、グルコースがUGT1A1を誘導する結果が得られた。従って、新生児期におけるカロリー摂取不足はUGT1A1の発現抑制を引き起こし、黄疸を引き起こす可能性があることを明らかにした。また、母乳成分によるUGT1A1酵素活性への阻害効果についても、15種類の脂肪酸について検討することができ、そのうち強い阻害効果を示す脂肪酸を見出すことが出来た。 以上のことより、本年度はおおむね順調に研究が進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
グルコース処置を行ったin vivo、in vitro試験により、グルコースはUGT1A1を誘導することを明らかにした。しかしながら、どのようなメカニズムでグルコースはUGT1A1を誘導するかは不明である。そこで、今後はこのグルコースによるUGT1A1発現誘導メカニズムの解明を行う。具体的には、マイクロアレイ解析や、ルシフェラーゼアッセイを行い、グルコースによるUGT1A1転写調節に関与する転写因子、プロモーター領域を同定する。
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