研究課題/領域番号 |
24890227
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
橋本 寿之 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90528390)
|
研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
|
キーワード | 細胞周期 / ライブイメージング / 心臓発生 / 再生医療 |
研究概要 |
我々は蛍光タンパク質を用いて細胞周期をリアルタイムで可視化するイメージング技術Fucci (Fluorescent ubiquitination-based cell cycle indicator)のプローブを恒常的に発現するトランスジェニックマウスを用いて、心筋細胞の細胞周期の解析を行った。そして今までの研究成果に基づき、新生仔期マウスにおける細胞周期の停止する直前と直後の心筋細胞を用いてDNAマイクロアレイによる解析を行い、心筋細胞の細胞周期を制御して いる新たな調節因子を探索することを目的として研究を計画した。最終的には同定した新規の心筋細胞周期の調節因子を用いて、終末分化状態に入った心筋細胞を再び増殖させ、組織を再生し、末期心不全患者の新たな根治療法を確立することを目標としている。 我々は独自に心臓ex vivo培養法を確立し、これを用いてFucciトランスジェニックマウスの心臓のライブイメージングを行った。その結果、中期マウス胚(E11.5~14.5)に比べて後期マウス胚(E18.5)や新生仔期の心筋細胞のS/G2/M期の長さは1.5倍ほど延長しているという新知見が得られた。上記の結果より、本年度は心筋細胞周期の調節機構が変化していると予測される新生仔期のFucciトランスジェニックマウスの心臓を用いて、フローサイトメトリーによりS/G2/M期にある心筋細胞を振るい分け、DNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、我々はS/G2/M期にある心筋細胞において著名にmRNA発現量が変化しているいくつかのタンパク質を同定した。上記のDNAマイクロアレイ解析の結果より、新規の心筋細胞周期調節因子の候補を複数同定しており、まずは各ステージ間のマウスの心臓で候補因子の発現量をQT-PCRで比較し、実際にどの発育段階で多く発現しているかを評価している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々は、同定した遺伝子をCAG promoterを有する発現plasmidに組み換え挿入し、COS7細胞に遺伝子導入しタンパク質を発現させる実験を行っている。これにより組み換えタンパク質を作成・精製し、同タンパク質を用いて初代培養心筋細胞に様々な条件で添加してin vitro機能解析を行う予定であるが、目的のタンパク質の発現が不安定であり、精製がうまくいっていない。候補因子のタンパク質は商業ルートでは入手できないため、機能解析はどうしても我々で作成する組み換えタンパク質の精製に依存してしまう。そのため現在は遺伝子導入用カチオン性脂質を利用しているが、場合によってはアデノウイルスを利用する方法に変更することを検討している。また、成獣の心筋細胞をフローサイトメトリーで解析しようと試みたが、細胞の大きさ、もしくは耐久性の問題のためか、RNAの抽出が困難であり、代替策を検討しているところである。in vivo解析としてαMHC promoterを用いて候補因子の心臓特異的過剰発現遺伝子改変マウスを作製しているが、こちらはプラスミドの作製までは順調に進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は引き続き心筋細胞の細胞周期を制御する調節因子候補のin vitro機能解析をin vitroおよびin vivoで解析する。in vitro系ではアデノウイルスを用いたベクターへの変更を検討している。また、in vivo解析としてαMHC promoterを用いて候補因子の心臓特異的過剰発現遺伝子改変マウスを作製する。このマウスを用いて、候補因子が心臓の発生、および成熟においてどのような役割を果たしているのかを明らかにする。 また、Fucciトランスジェニックマウスの成獣においての細胞周期の解析をより詳細に行う予定である。特にFucci心筋梗塞、及び大動脈縮窄モデルマウスを作成し、病的状態における心筋細胞周期がどのように変動するかを明らかにする。また、そのときに細胞周期進行シグナルを発現している心筋細胞がどのような遺伝子プロファイルを持つか解析し、胎仔期の心筋細胞と比較することにより、各ステージ間での心筋細胞周期調節機構の違いを解析する予定である。
|