我々は蛍光タンパク質を用いて細胞周期をリアルタイムで可視化するイメージング技術Fucci (Fluorescent ubiquitination-based cell cycle indicator)のプローブを恒常的に発現するトランスジェニックマウスを用いて、心筋細胞の細胞周期の解析を行った。そして今までの研究成果に基づき、新生仔期マウスにおける細胞周期の停止する直前と直後の心筋細胞を用いてDNA解析を行い、心筋細胞の細胞周期を制御している新たな調節因子を探索することを目的として研究を計画した。 我々は独自に心臓ex vivo培養法を確立し、これを用いてFucciトランスジェニックマウスの心臓のライブイメージングを行った。その結果、中期マウス胚(E11.5~14.5)に比べて後期マウス胚(E18.5)や新生仔期の心筋細胞のS/G2/M期の長さは1.5倍ほど延長しているという新知見が得られた。上記の結果より、心筋細胞周期の調節機構が変化していると予測される新生仔期のFucciトランスジェニックマウスの心臓を用いて、フローサイトメトリーによりS/G2/M期にある心筋細胞を振るい分け、DNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、我々はS/G2/M期にある心筋細胞において著名にmRNA発現量が変化しているいくつかのタンパク質を同定した。上記のDNA解析の結果より、新規の心筋細胞周期調節因子の候補を複数同定しており、新規候補因子をアデノウイルスを用いて心筋細胞で強発現させ、その機能を解析している。また、新規候補因子を心筋細胞においてノックダウン、もしくはノックアウトする計画も進行している。
|