研究課題/領域番号 |
24890228
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
八木 拓也 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30528740)
|
研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
|
キーワード | iPS細胞 / 筋萎縮性側索硬化症 |
研究概要 |
Aim 1:変異FUS患者由来iPS細胞を用いた検討 疾患iPS細胞を用いた研究を行う際に、重要な問題となるのはコントロールとなる正常iPS細胞である.神経変性疾患のような年齢依存性に頻度の上がる高齢発症疾患は、細胞提供者が晩年に発症する可能性は否定できない.従って、神経変性疾患患者のコントロールには、重篤な疾患が否定された高齢者からiPS細胞を作成する必要があると考え、生前重篤な疾患がなく極めて健康な老後を過ごした百寿者(105歳以上)の2例よりiPS細胞の樹立を行い、特性解析を行った.免疫染色において、Tra1-60、Tra1-81、SSEA3、SSEA4の発現確認を行った.RT-PCRにおいて、transgeneのsilencingとESマーカーの確認を行った.三胚葉の分化能を評価するため、in vitroで胚葉体を介して、内胚葉・中胚葉・外胚葉への分化を行った.またin vivoでSCIDマウスへiPS細胞の皮下注を行い、テラトーマの形成にて三胚葉への分化の確認を行った.以上より、超高齢者の皮膚からでもiPS細胞を作り出せることを示したとともに、重篤な疾患のない理想的な正常iPS細胞(スーパーコントロール)が確立できた. Aim 2: 変異型FUS Tgマウスの作製と分子メカニズムのin vivo解析 変異型FUS Tgマウスの作成を行った.C末端の欠損株(△C-FUS)をThy-1プロモーターの下流に導入し、トランスジェニックベクターを作成して、受精卵のマイクロインジェクションを行い、複数の系統(ファウンダーマウス)を作成した.大脳におけるウエスタンブロットで、最も発現量が高い系統を主に繁殖させて、現在、表現型(体重、運動機能、行動)の評価を行っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、iPS細胞の実験系においては、コントロールとなりうる百寿者由来iPS細胞の樹立・解析を行い、今後、iPS細胞を用いた神経変性疾患研究への応用が可能であると考えられ、重要な進展であると考えられる. in vivoの実験系においては、ALS関連神経疾患モデルマウスとして、変異型FUSトランスジェニックマウスの樹立・解析を行った.それらのマウスにおいて、表現型・生化学的解析を現在行っているところである.表現型として進行性の神経症状を呈し、免疫組織学的にも神経細胞死が確認されれば、画期的なモデルマウスであると考えられ、ALSに関連した運動ニューロンの神経変性メカニズムを解析する意味で非常に重要なツールとなりうる.
|
今後の研究の推進方策 |
Aim 1:変異FUS患者由来iPS細胞を用いた検討 今後は、疾患由来iPS細胞の樹立を行い、さらには治療ターゲットの同定を目標とする. 樹立したiPS細胞は、胚様体を介して、神経細胞へ分化誘導を行う.疾患由来神経細胞において、生化学的、細胞生物学的解析を行う. 生化学的解析として、TDP-43・FUSの発現量、SGの形成をウエスタンブロット、蛍光免疫染色により正常対象者と神経疾患を比較する. Aim 2: 変異型FUS Tgマウスの作製と分子メカニズムのin vivo解析 初年度に樹立した変異型FUS Tgマウスにおいて、生化学的(SGマーカー、TDP-43、FUS発現、不溶分画、細胞質分画)、組織学的(H&E、TUNEL染色、TDP-43、FUS、ユビキチン免疫染色)検査を行いその神経変性過程を検討する. 特に、脊髄前角、末梢神経の変性は詳細に行う. 行動解析としては生存曲線を比較するとともに、footprint、rota-rod treadmill (ENV-577, neuroscience, Tokyo)、hanging wire testを評価して運動能力、活動性を定量的に解析する.また、変異型FUSのホモ接合体のマウス、さらにはTDP-43のトランスジェニックマウスB6;SJL-Tg(Thy1-TARDBP)4Singh/J(The Jackson Laboratory)とのダブルトランスジェニックマウスの作成を行い、表現型への影響を検討する.
|