研究課題
がん治療において放射線治療の効果を高める放射線増感剤の開発と実用化の意義は大きい。本研究代表者は、これまでにDNA損傷応答に関わるPoly(ADP-ribose) polymerase (PARP)-1 に注目し、その阻害剤による増感の研究を行ってきた。PARP阻害剤(PARPi)の放射線照射後のがん細胞株に対する致死効果の増強とその機構を検討し、PARPiが低線エネルギー付与(LET) のγ線のみならず、高LETの炭素線にも増感効果を示し、幅広い線質の有効な放射線増感剤となりうることを示した。本研究においてPARPiは陽子線に対しても増感効果を示すことが細胞レベルで確認された。その作用機序は、γ線や炭素線と同様にDNA損傷修復応答の遅延とDNA二本鎖切断のプロセッシング遅滞が考えられた。この結果はPARPiが幅広い線質の有効な放射線増感剤となりうるという本研究代表者らの推論を支持するものであった。本研究でPARPiとして用いたAZD2281は既に臨床試験において単剤又は既存の抗がん剤との併用での少ない有害事象での臨床効果が報告されている。今回の実験結果は、PARPiが、優れた線量分布を示す陽子線や炭素線などの粒子線治療において、より高い抗腫瘍効果とより少ない有害事象の実現に寄与できる可能性を示唆するものであった。また本研究では、ヌードマウスの脳内へのがん細胞株注入により作成したマウス脳内腫瘍に対する各処理の影響を観察する動物モデルを想定し条件検討を重ねてきたが、脳への生着率が約20%と低く、実験効率と動物愛護上の観点から、マウス大腿皮下移植モデルへ変更し条件検討を進めた。同モデルにおいて、コントロールと比較してX線とPARPiを併用した群での抗腫瘍効果が観察された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Applied Radiation and Isotopes
ページ: (In printing)
10.1016/j.apradiso.
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 435 ページ: 100-106
doi: 10.1016/j.bbrc.2013.04.048.
https://www.juntendo.ac.jp/graduate/kenkyudb/search/researcher.php?MID=4971