一昨年度に引き続き、昨年度も順調に研究が進められ、予想していたデータ以外にも多くの結果を得ることが出来た。現在は、それらの結果をもとに専門学術誌への論文投稿準備中である。 今回は形態学的なデータに加え、フローサイトメトリーを用いた解析により、定量的なデータを得ることが出来た。コントロール群と比較して、NBP及びPHZを投与した重症貧血マウスの末梢血中には、赤芽球系細胞マーカーであるTER119及びより未分化な赤芽球系マーカーであるCD71共陽性の細胞が確認できた。これらの特徴は胚子期の一次造血における赤血球と共通しており、このような細胞集団が肝臓や骨髄でも有意に増加していた。これらの細胞集団は、通常の赤芽球より大型であることもフローサイトメトリーの結果から確認できており、形態学的解析で得られた胚子ヘモグロビン発現細胞である可能性が高いと考えている。また、低酸素ストレス時に発現するHIFなどの転写因子の発現についても確認することができ、これらの関与が示唆された。 さらに昨年度発見した、新規造血器官である血リンパ節様構造についても同時に解析を進めており、この構造内においても胚子ヘモグロビンを発現する細胞集団が確認できている。これらの結果については第29回医学生物学電子顕微鏡技術学会等で報告している。 しかしながら、in vtitroにおける低酸素ストレス培養やsiRNAを用いた二次造血関連因子の抑制条件下において、胚子ヘモグロビン発現は確認できておらず、培養条件の設定などが今後の課題である。 一昨年度の結果と総合してもヘモグロビン発現機構における基礎データとして有用であり、今後は今回不十分なデータを補完しつつ学術誌への投稿や学会での発表を検討している。
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