研究課題/領域番号 |
24890239
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
照井 優一 昭和大学, 歯学部, 兼任講師 (00638158)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | セラミックス / 陶材焼付け / 材料科学 / 歯学 |
研究概要 |
現在,審美性や金属アレルギーの観点からオールセラミック修復に対する期待は高まっている.特に,ブリッジのような高い強度が求められるオールセラミック補綴物には,イットリア部分安定化ジルコニア(Y-TZP)が広く用いられるが,最近ではさらに強度の高い材料として,セリア系ジルコニア/アルミナ・ナノ複合材料(P-nanoZR)が登場している.このP-nanoZRは、既に幾つかの基礎実験や臨床試験が行われているが,実際の陶材築盛に関する明確な前処理法は規定されていない.また,これまで試験的に用いられた陶材は,このP-nanoZR専用ではなかったため,様々なメーカーから提供されている陶材間で,実際の焼付強さに大きな開きがあるだけでなく,個々の製品内でも安定した強度が得られていない.そこで,P-nanoZR本来の熱膨張係数や焼付機構などに適合した,専用陶材の開発を本研究の目的とし,各種Y-TZP用陶材を用いて作製した試験片での焼き付け強さ試験を行った.その結果,Vita社のVM9陶材で一番高い焼付強度が得られていたが,有意差が認められるまでには至らなかった.また,破断試験片後の表面をSEM,EPMA,ESCA,XRDを用いた解析を行い,特異的に残留する元素を特定した.その結果,陶材剥離後のP-nanoZr表面を覆い尽くすほどのSiやK,Alの元素が観察され,逆にベースとなるZr元素は殆ど観察されない状態であることが分かり,ライナー陶材自体は十分に残留していることが分かった.しかし,独自に調査した熱膨張係数が,もともとのカタログ値との間で違いがあるため,この熱膨張係数の違いによる焼付強度の変化についても,陶材側の熱膨張係数を調整し検討する必要があると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでメーカーが推奨してきたP-nanoZRで使える各種陶材について,ISO9693を用いた焼付強度を測定し,それぞれがISOで規定されている25MPa以上の焼付強度を発揮していることは分かったが,表面の処理状況やP-nanoZRの再結晶化の状況などによって,有意差が認められるほどのバラツキがあることも分かった.また,表面解析によって,破断後のP-nanoZR試験片表面の大部分に,前装用陶材のライナー成分が残留していることも分かった.これは,メーカー推奨のY-TZP専用陶材のライナーの熱膨張係数が比較的近い,あるいは,逆にP-nanoZRよりも高い状態であるにもかかわらず,ボディー陶材の熱膨張係数に大きなばらつきがあることに起因すると考えられる.そのため,次年度の目標としてボディー陶材の熱膨張係数について検討することを掲げることができた.
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今後の研究の推進方策 |
P-nanoZRを含めたジルコニア系材料では,応力誘起変態による結晶状態の変化によりジルコニアそのものの体積変化が起こることが知られているが,このことが陶材との接合界面での圧縮応力に対し,どのように影響するか検討を行う.また,平成24年度に行った,P-nanoZR表面に残留するオペーク陶材の元素分析から,焼付に対して有利と考えられる元素を配合したオペーク陶材の試作を行い,さらに,熱膨張係数を変化させたボディー陶材についても試作を行い,より強固で安定した焼付強度が得られる前装用陶材の開発と,表面処理条件のシステム化を行っていく.
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