研究課題/領域番号 |
24890256
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
久松 洋介 東京理科大学, 薬学部, 助教 (80587270)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 金属含有がん治療薬 / イリジウム錯体 / 燐光 / ペプチド / アポトーシス / TRAIL / デスリガンド / デスレセプター |
研究概要 |
TRAILは、TNFファミリーに属するデスリガンドの一種で、がん細胞に過剰発現するデスレセプター (DR) に結合することにより、がん細胞選択的にアポトーシスを誘導する。研究代表者は、副作用の少ない新規金属含有がん治療薬の創製を目指し、TRAIL を模倣した人工デスリガンドの開発を研究目的とする。 本年度は、トリスシクロメタレート型イリジウム錯体を基本構造とするTRAIL 様人工デスリガンドの設計と合成に取り組んだ。まず、当研究室ですでに合成経路が確立されているIr(tpy)3の5'位をカルボン酸に置換し、エチレンジアミンリンカーを縮合させた中間体に 別途、Fmoc 固相合成法により合成したPatch A(199-206)(Asn199-Thr-Lys-Asn-Asp-Lys-Gln-Met206)ペプチドを導入した。HPLCを用いて、ペプチド含有イリジウム錯体の精製を検討したところ、Patch A(199-206)ペプチドに含まれるMet残基が酸化されたピークが観測された。この問題は、ペプチドを導入したイリジウム錯体のすべての工程を遮光下で行うことで解決できた。また、Metを含まないPatch A(199-205)ペプチドを合成し、イリジウム錯体に導入した化合物の合成も合わせて行った。合成した人工デスリガンドのターゲットタンパク質であるDRとの親和性は、水晶発振子マイクロバランス測定法を用いて評価した。その結果、Patch A(199-206) および Patch A(199-205) いずれのペプチドを導入したイリジウム錯体においても、Kd = ~10μMとあまり強くはないものの、DRに結合することが明らかとなった。さらに、Jurkat細胞を用いてMTT アッセイを行った結果、イリジウム錯体の濃度が75μMと高濃度ではあるものの、25%程度の細胞死が誘導された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標であったシクロメタレート型イリジウム錯体の配位子上に、デスレセプターに結合することが期待されるPatchAペプチドを組み込んだ人工デスリガンドの設計・合成および精製法の確立に取り組み、ある程度達成することができた。金属錯体に保護ペプチドを縮合反応により導入し、脱保護し精製する方法はあまり知られておらず、我々の方法はペプチド含有金属錯体の合成に対して有用な知見を与えるものと考える。人工デスリガンドのデスレセプターへの結合能の評価は、水晶発振子マイクロバランス測定法を用いて行った。その結果、Met残基を含むPatch A(199-206) および Met残基を含まないPatch A(199-205) いずれのペプチドを導入したイリジウム錯体においても、Kd = ~10μMとあまり強くはないもののデスレセプターに結合することが明らかとなった。さらに、Jurkat細胞を用いてMTT アッセイを行った結果、イリジウム錯体の濃度が75μMと高濃度ではあるものの、25%程度の細胞死が誘導された。 従って、本年度は、シクロメタレート型イリジウム錯体を基本骨格に有する新規人工デスリガンド設計・合成を行い、それらの細胞死誘導活性評価やデスレセプターとの親和性評価法などアッセイ系の確立も合わせて達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
イリジウム錯体にペプチドを導入した人工デスリガンドの合成法はある程度確立できたため、今後は、デスレセプターへの親和性とデスレセプターを過剰発現したがん細胞に対するTRAIL様活性の向上が課題である。本年度は、候補となるペプチド配列(例えば、PatchAとPatchBを合わせ持つペプチドや、ランダムスクリーニングにより、デスレセプターに強く結合することが知られているペプチドなど)を新たに導入したイリジウム錯体を設計・合成する。合成できた新規人工デスリガンドは、Jurkat細胞を用いたTRAIL様活性評価ならびにイリジウム錯体の特徴の一つである発光特性を利用したがん細胞のイメージングへと展開する。また、デスレセプターを過剰発現するがん細胞として、Jurkat細胞以外にも同じくヒト白血病細胞であるKOPM28細胞やNalm細胞など、別の細胞株での検討も行う。加えて、TRAIL抵抗性のK562細胞に対しても同様に人工デスリガンドの活性評価を行う。TRAILは、細胞膜上に発現したデスレセプターに結合することで、細胞内でカスパーゼが活性化され、その結果アポトーシスが誘導される。実際に、カスパーゼ阻害剤であるz-VAD-fmk を添加すると、TRAILの細胞死誘導が阻害された。従って、人工デスリガンドに対しても、カスパーゼ阻害実験を行うことで細胞死が抑制されるかどうか検討する予定である。
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