研究課題/領域番号 |
24890265
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
山越 康雄 鶴見大学, 歯学部, 准教授 (20182470)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 象牙質 / 歯髄 / 歯根膜 / 非コラーゲン性タンパク / DSPP / クロマトグラフィー |
研究概要 |
昨今のiPS細胞作製技術により今後さらに歯の再生技術の進歩が予想される中、エナメル質や象牙質などの硬組織及び歯周組織中に含まれるタンパク質の構造・機能及び生理作用を明らかにすることは非常に意義がある。象牙質シアロリンタンパク質(以下DSPP)は象牙質中に最も多く含まれる非コラーゲン性タンパク質であり、この遺伝子の突然変異が象牙質形成不全症及び象牙質異形成症を引き起こす原因遺伝子であるため、このタンパク質の構造機能解析研究は重要視されてきた。 本研究ではDSPPが歯周組織への分化誘導因子としての機能を有しているかどうかを調べるために歯髄組織中に含まれるDSPPを分離精製し、構造多様性や翻訳後修飾を解明後、DSPPを用いた歯周組織再生への臨床応用へと展開するための研究基盤を確立することを目的とした。 本年度は、(1)歯髄組織に含まれるDSPPを効率よく得るための新規方法を開発して抽出・分離精製し、(2)歯髄組織内ですでにプロセシングが生じているかどうか、(3)DSPPが生理活性を有しているかどうかを明らかにすることを試みた。 歯髄組織をNP40界面活性剤を含む細胞抽出液に混和後、超音波破砕によって得られた抽出液をヘパリン・アフィニティークロマトグラフィーで分離した。ヘパリンカラム非結合画分を溶出後、0.05, 0.1, 0.2, 1M NaClを用いてヘパリンカラム結合タンパク質をそれぞれ溶出すると、DSPPは0.1M NaCl画分に溶出されることがウェスタンブロットにて判明した。さらに同画分には歯根膜由来培養細胞に対してアルカリホスファターゼ活性を上昇させて石灰化を促進させる物質が含まれていることが判明した。また、象牙質リンタンパク質(DPP)のバンドがいずれの画分にも検出されないことより、DSPPのDPPへの初期プロセシングが歯髄組織中では起こっていないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は歯髄のような軟組織からタンパク質を抽出、分離精製した経験を有していなかったが、NP40界面活性剤を含む細胞抽出液を用いることで効率よくDSPPを抽出することに成功した。さらにDSPPをヘパリンクロマトグラフィー及び逆相HPLCにて分離精製できる技術も取得し、上記概要における目的(1)は達成できたと考える。また、DSPPから象牙質シアロタンパク質と象牙質リンタンパク質への組織内でのプロセシングも起こっていないことも明らかにすることができ、上記概要における目的(2)も達成できたと言える。さらに興味深いことは、ヘパリンクロマトグラフィーにおいて、DSPPの溶出画分に歯根膜由来培養細胞に対してアルカリホスファターゼ活性を上昇させて石灰化を促進させる物質が含まれていることである。この結果はDSPPが生理活性作用を有しているかどうかを解明する上記概要における目的(3)を成し遂げるのに非常に重要な情報であると言える。このように当年度に実施した研究実績から考えると、本研究課題の目的の達成度はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として、(1)ヘパリンクロマトグラフィーにおいてDSPPと同じ画分に溶出される、歯根膜由来培養細胞に対してアルカリホスファターゼ活性を上昇させて石灰化を促進させる物質がDSPPであるのかどうかを明らかにする。(2)DSPPでない場合は、その物質を同定し、(3)DSPPとどのような相互関係があるのかを調べる。(4)ヘパリンクロマトグラフィーにおいて、0.2M NaCl画分に溶出したDSPPよりも高分子のタンパク質を同定し、(5)DSPPとどのような相互関係があるのか調べる。
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