本研究は、腎臓における尿細管-糸球体フィードバック機構の一部としてマクラデンサ細胞からプロスタグランジン(PG)を分泌する際の細胞膜輸送経路の存在を実証すると共に、近傍の近位尿細管に発現するPG輸送体OAT-PGを介したPGE2排除機構との機能共役を明らかにすることを目的に実施した。これまでPGの分泌機構や代謝・排泄機構に関わる分子の実証は十分に進められていなかったが、OAT-PGが代謝酵素である15-PGDHと共に腎近位尿細管に共局在する事などから分泌や代謝・排泄の過程に合成酵素や代謝酵素と機能共役する膜輸送体が存在する可能性が想定された。特に腎マクラデンサからPGを分泌する機構と近位尿細管での回収によって局所でのPG濃度を調節する機構が重要であることが示唆されることから、マクラデンサからPGを分泌するメカニズムの解明及び全体のバランスを制御する機構の解明がこれらのシステムの全容解明に不可欠である。 平成24年度の研究成果として以下のような成果を得た。1. 副腎皮質ステロイドホルモンがマクラデンサにおけるPG産生酵素COX-2の発現を制御すると共に、OAT-PGの発現を制御している事が示された。前者は鉱質コルチコイドによって制御されるのに対し、後者は糖質コルチコイドの調節を受け、Luciferaseアッセイからも近位尿細管において発現する糖質コルチコイド受容体を介して転写制御を受けている可能性を見出した。2. マウス不死化マクラデンサ細胞のDNAマイクロアレイ解析により、PGを輸送する可能性のあるいくつかの分子を同定した。以上の結果をもとに、今後は候補分子の機能を詳細に検討し、OAT-PGを介したPG代謝・排泄系を含む腎マクラデンサPGシグナリング制御の全容解明を試みる予定である。
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