本研究の目的は、透析中の低血圧症などを誘因とする透析困難症の発症を予見するリスクスケール(DSR スケール:Dysdialysis Syndrome Risk Scale)を作成し内的妥当性を検証することである。 研究方法は、文献を基に39項目からなるDSRスケールの原案を作成し、近畿圏内の7つの医療機関で透析を受ける患者372名を対象に39項目の臨床データ及び患者属性を調査した。分析方法は、“処置介入スコア”を作成し、その内的妥当性を検証するために相関分析にて血圧(透析前後差)との関連性を検証した。また、DSRスケールの項目を重回帰分析により抽出し、処置介入スコアとの関連性を相関分析にて検証した。 結果は以下のとおりである。 1.血圧(透析前後差)と処置介入スコアは有意な相関関係にあり、処置介入スコアはROC曲線下面積により0-1(非血圧低下群)と2-5(血圧低下群)で分割されることが示された。2.DSRスケールの項目に①性別、②収縮期血圧透析前後差、③不整脈の有無、④左室肥大の有無、⑤除水速度、⑥息切れの有無の6項目が抽出された。3.処置介入スコアとDSRスケール総合点は有意な相関関係にあり、有意血圧低下群はDSRスケールの総合点が高かった。4.DSRスケール総合点毎の有意血圧低下群の比率は0-2点以下52%、3点72%、4点84%、5点以上100%の割合で除水速度の調節、昇圧剤の使用、除水停止などの処置が必要であることが示唆された。 以上より、患者の血液・生理学検査データ及び透析中に生じる自覚症状の6項目により透析困難症を予測できると示唆された。
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