日常生活は様々な明るさや色の環境下で営まれるが、視機能評価の代表である視力検査は明室にて行われる。低照度環境下における視機能評価については、あまり行われていないのが現状である。緑内障や白内障を罹患する場合、短波長光つまり青色光の視認性が低下することはこれまで報告されているが、波長の異なる光を用いて低照度環境の下における視力への影響について研究は行われていない。そこで、我々は、眼疾患(緑内障)がある場合、波長の異なる光(分光分布)や照度の違いが視力にどのように影響するか検討を行った。 正常眼においても、波長の異なる光では同じ照度(視標提示面の明るさ)であっても視力に影響することが確認できた。短波長子光において視認性が低下する。10.0 lx程度の環境下で、正常眼と眼疾患を有する眼の間で、差が生じやすいことが確認できた。照明光においては、色の違いよりは照度の影響を強く受けることが確認できた。これらの結果については、国内ならびに海外の学会にて発表を行った。 今後の課題として、眼疾患を有する人の測定数を増やし、障害程度ごとに細かく検証する必要がある。今回は照度調整等を手動で行ったため、測定に際して時間を要した。また、0.1 lxの環境を作るためには、絶対暗室を必要とすることから、測定できる場所が大幅に限定された。今後、測定に使用する光の波長と明るさを限定する必要がある。 市販の夜間視力を改良することで、容易に測定可能な器機の作製を目指すにあたって、今回の結果は、今後の研究に寄与するものであると考える。
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