前年度に確立したNup88-GFP発現細胞の抽出液を用いる免疫沈降法を主な実験方法として、Nup88に結合する因子の探索とその結合様式の解析を行った。まず、Nup88と結合する因子を網羅的に探索するために、Nup88-GFP発現細胞からGFPをターゲットとして免疫沈降を行い、SDS-PAGEで分離後、質量分析装置に供して、ビメンチン、αアクチン、GAPDH、HSC70を結合の候補因子として同定した。このうち再現性が得られたビメンチンとの結合に関して、ビメンチンの欠損変異蛋白質とNup88-GFPとの結合を同様の方法で解析し、ビメンチンの脱重合に関わるN末端領域付近にNup88が結合することを示唆した。一方、Nup88側のビメンチン結合領域は同定できなかった。また、プロテオーム解析からNup88との結合が示唆されていたCD82に関して、CD82を細胞に過剰発現させて両者の結合を免疫沈降法によって解析したが、結果として特異的な結合は見出せなかった。以上から、ビメンチンとNup88の関係性に焦点を絞って解析を行った。まず、Nup88の細胞内発現に与えるビメンチンの影響を調べたが、ビメンチンを過剰発現させた細胞においてNup88の発現量は変化しなかった。次に、ビメンチンを発現していない上皮様細胞(MCF-7細胞)と発現している間葉様細胞(MDA-MB-231細胞)におけるNup88の発現量を比較したところ、MCF-7細胞においてむしろNup88の発現量が多い傾向が見られた。
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