研究課題/領域番号 |
24890293
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古澤 之裕 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (80632306)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / エピジェネティクス |
研究概要 |
Treg細胞には、中枢リンパ組織である胸腺で分化したNatural Treg細胞(nTreg細胞)と腸管などの末梢リンパ組織でサイトカイン刺激により分化するInducible Treg(iTreg)細胞の2種類が存在することが知られており、腸管には両細胞が存在している。これまでの解析により、Np95欠損マウスでは腸管以外の組織に炎症像が認められないことから、他の組織にも存在しているnTreg細胞よりむしろiTreg細胞が主として減少していることが疑われていた。Treg細胞のマーカーとしてFoxp3、nTreg細胞のマーカー分子としてHeliosが知られており、両分子を指標としてnTregとiTregの割合を計測したところ、予測通りiTregの優位な減少が確認された。 更に、メカニズムの解析として、in vitroにおいて末梢リンパ組織のTreg分化誘導モデルを作成し、更なる性状解析を行った。In vitroにおける培養方法としては、Np95 cKOマウスからナイーブT細胞(Tnaive細胞)をセルソーターにて単離し、抗CD3/28抗体、TGF-βおよびIL-2の存在下で培養してTreg細胞に分化誘導した。増殖の割合を、細胞の計数およびNucleotide analogであるEdUを用いた細胞周期解析法にて定量したところ、Np95欠損マウス由来の細胞ではG1期における細胞周期停止が観察され、細胞数の低下が認められた。Np95の有無により増殖に差が見られたので、増殖中の細胞の遺伝子発現変化を網羅的に解析したところ、細胞周期停止に関連するいくつかの遺伝子について脱抑制が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度の予定は、「Np95欠損マウスおよび野生型マウスにおける腸管Treg細胞の性状解析」であった。この計画ではNp95欠損によるTreg細胞の減少が、分化異常によるものか分裂以上によるものかを決定するためのものであった。結果として、Np95欠損は、マスターレギュレーターであるFoxp3分子の発現に影響を及ぼさなkったことから分化に影響を与えるものではなかった。しかしながらNp95欠損により、分化ではなく細胞増殖に異常をきたすことが明らかになった。このことから、Np95が腸管Tregの分化ではなく、増殖に関与していることが明らかとなった。Np95欠損マウスにおける腸管Tregの性状が判明したころから、平成24年度の計画目標を十分に達成したものと思われる。分子機構の解明は平成25年度から開始の予定であったが、それに先立ち平成24年度の性状解析終了後、分子機構の解明のためのマイクロアレイ解析を行った。現在はNp95欠損によって脱抑制を受けた分子のうち、細胞周期停止に関与する分子を特定中である。以上より、本研究課題は平成24年度において、当初の研究計画以上に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
近年マイクロアレイを用いた網羅的な転写産物の解析が一般化し、また転写を調節しているエピゲノム機構についても、次世代シーケンサーを用いた網羅的な解析が主流となりつつある。本研究で研究対象としているNp95は、グローバルなDNAのメチル化に関わる分子であり、その分子が欠損したマウスの細胞の解析には、従来の個別の遺伝子解析手法では限界がある。本研究課題では、これまでの遺伝子発現の個別解析を脱し、近年主流となりつつあるゲノムワイドな解析手法を中心として研究を展開していく。網羅解析は一度に膨大な情報を取得することができる一方で、膨大すぎる情報を処理する能力が必要となる点に問題がある。本研究課題では、マイクロアレイと次世代シーケンサーから得られた情報について共相関解析のために、バイオインフォマティシャンの協力を得てこれを行う。
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