本研究では、リアリティーのある状況設定の中で自治体の医療・保健福祉関連の部署の担当者が災害対応の演習を実施できるシステムを構築するため、シミュレーション技術を活用した支援ソフトウェアを開発することを目指してきた。特に火山災害によって溶岩流が発生する事例を取り上げ、従来モデルよりも信頼性が高い溶岩流シミュレーションの計算コードを提案し、それによって得られる溶岩流分布を組み込んだ災害情報マッピングシステムを構築する段階まで到達することに成功した。 溶岩流シミュレーションの改良に関しては、平成25年12月に米国サンフランシスコ市にて開催されたAmerican Geophysical Unionの2013年秋季大会にて「Improvement of Two-dimensional Numerical Model of Lava Flows」というタイトルにて発表した。マッピングシステムに関しては平成26年2月に千代田区にて開催された集団災害医学会総会・学術集会ならびに平成26年5月に横浜市で開催された地球惑星科学連合2014年大会にて発表した。 これらの研究発表を通して本研究の取り組みが火山研究者にも評価され、平成26年度より山梨県富士山科学研究所の火山防災研究部と共同研究を進める方向で検討を進めている。平成25年度末には、静岡県、山梨県、神奈川県合同での富士山火山防災対策協議会で富士山噴火に備えた広域避難計画が策定され、今後、関連する市町村ごとに細分化された具体的な避難計画案が提案されていくことが予想される。その際には、病院の入院患者や高齢者、障がい者等、避難行動に援護が必要な住民のスムーズな避難が可能な計画を策定することが重要である。平成24年度からの2年間の本研究では、このために実践的に活用できる技術の基盤を整備することができたものと認識している。
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