研究概要 |
本研究では第一世代上皮性成長因子受容体(EGFR)-チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の耐性化を判定することが可能な分子プローブの開発を目的としている。本年度は耐性患者の約50%に見られるT790M変異を見極めるために第一世代、第二世代TKIの構造をベースにEGFRの結合能の異なる二種類の新規イメージング製剤(プローブA, B)の合成および評価を行ってきた。シグナル発生部位の核種は汎用性の高い99mTcを導入できるような錯体の分子設計を行い、順次、研究計画に基づき①ATP結合部位、②シグナル発生部位、③spacerのパートを合成した。さらに合成した標識前駆体から99mTcでの標識反応を検討し、80%以上の高い放射化学収率で標識することに成功した。そこで合成したプロ-ブA, BをT790M変異型耐性細胞株を用いて、in vitroにおけるそれぞれのプローブの細胞集積性を比較した。その結果、第二世代TKIの構造をベースにしたプローブBがプローブAよりも1.8倍高い集積を示した。この集積性の違いがEGFRの変異を認識しているのかを同様の細胞を用いて検証した。一般にTKIがEGFRに結合するとEGFR自己リン酸化を阻害し、細胞死を誘導することから、細胞増殖抑制試験およびwestern blotによる評価を行った。細胞増殖抑制試験では50 μMにおいてプローブBがほぼ100%の細胞増殖抑制効果を示したのに対し、プロ-ブAでは同濃度においてほとんど細胞増殖抑制効果を示さなかった。一方、western blotによる自己リン酸化阻害能の評価でもプローブBがプローブAよりも強い阻害活性を示すことが確認された。これらの結果により設計したプローブの変異受容体への結合能の違いを示すことができた。
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