研究概要 |
Schnurri-3 (Shn-3) を介した免疫応答機構の解明のため、本年度では以下の研究結果を得た。 1) さらなるT細胞におけるShn-3の役割の解明のため、非免疫時における肺や腸管などの非リンパ系組織中のCD4T細胞がどのようなサイトカイン産生しているかを確認したところ、T細胞特異的Shn-3欠損マウスでは、自己免疫疾患の発症に深く関与するIL-17産生CD4T細胞 (Th17) の割合がコントロールマウスと比べ優位に増加していた。そこでナイーブCD4T 細胞をTh17細胞分化誘導条件下で培養を行ったところ、Shn-3欠損CD4T細胞では野生型CD4T細胞に比べ、優位にTh17分化が促進された。 2) Th17分化誘導条件の培養においてShn-3欠損CD4T細胞ではTh17分化の促進が認められた事から、Th17がその発症に大きく関与する実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis, EAE)を用いて検討を行った。するとT細胞特異的Shn-3欠損マウスはEAE誘導後、コントロールマウスに比べ臨床スコアが優位に悪化した。 3) Th17分化に重要なTGF-β, IL-6, IL-23について検討したところ、CD4T細胞においてShn-3はこれらサイトカンに対して影響を及ぼさなかった。一方、T細胞が産生するIL-2はTh17分化抑制因子である事が報告されている。Shn-3欠損CD4T細胞は野生型CD4T細胞に比べて、抗原刺激時におけるIL-2産生が低い事から、これが原因でTh17細胞分化が促進しているのではないかと仮説を立て、IL-2をTh17分化誘導条件下に加え培養した。すると予想通りにShn-3欠損CD4T細胞のIL-17分化を抑制する事が出来た。これら結果より、CD4T細胞においてShn-3はIL-2産生を制御する事でTh17分化を制御している事が明らかとなった。 4) B細胞におけるShn-3の役割を検討するため、B細胞特異的Shn-3欠損マウスを作成し、免疫後における免疫グロブリン産生について検討したが、コントロールマウスと比べ差は認められなかった。
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