研究課題/領域番号 |
24890298
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
佐々木 紀彦 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (80639063)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | ヒトiPS細胞 / 分化誘導 / 血管内皮細胞 |
研究概要 |
まず、供与者年齢の異なるヒトiPS細胞を8種類(うち2種類は高齢者由来)準備した。加齢メモリーのようなものがiPS細胞において継代数に伴いリセットされてしまう可能性も考え、継代数の少ないもの(継代数20前後)と多いもの(継代数40以上)の凍結ストックを十分に行った。こうしたiPS細胞のうち性状の安定している高継代数のものについて、まず申請者は、血管内皮細胞への分化誘導を試みた。胚様体を経由する方法ではうまく誘導できなかった。一方、Wntシグナル活性化剤を組み合わせた接着培養法では、多少の培養条件の変更により、効率的に再現性良く血管内皮細胞に誘導できることがわかった。血管内皮細胞のマーカーによるソーティングにより純化し、培養後にマーカーの発現確認とLDL取り込み能の観察により、血管内皮細胞に純化されていることが確認できた。iPS細胞の種類により分化効率に違いがみられたが、ソーティングによる純化により、すべての種類について血管内皮細胞を誘導できることがわかった。この分化誘導法は、胚様体を介する方法よりも短期的に誘導可能なため、有効な方法である。 分化細胞の機能解析として、上記のように分化誘導した血管内皮細胞について、in vitroにおける血管形成試験を行った。一部の細胞で試みた結果、内皮機能である血管形成が確認され、種類により形成能に違いがみられた。由来の加齢を反映しているかはまだはっきりとしていない。 また、上記のように分化誘導を行った際に、iPS細胞の種類により分化効率に明らかな違いがみられた。分化効率の異なる細胞について、経時的に分化過程での糖鎖関連遺伝子の発現をPCR法で比較検討した結果、発現様式に違いがみられた。糖鎖発現の違いが分化効率に影響を与えている可能性が示唆される結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画にある①ヒトiPS細胞の準備と分化誘導の検討においては、研究実績の通り、時間を要したがおおむね完了した。②糖鎖の発現様式の検討においては、全く検討できていない。③分化細胞の機能解析においては、研究実績の通り、一部の細胞において、in vitroにおける血管形成試験を行った。④加齢に依存した分化能に関わる糖鎖構造の検討においては、一部の細胞において、遺伝子発現の比較を行ったが、糖鎖発現は検討していない。 以上のように、分化誘導法の確立で時間を要したため、一部計画通りには行えていないが、分化誘導法の確立を含め、主要な実験材料である分化細胞の準備が進んでいるため、今後の研究目的の遂行の上では、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
期間内に研究目的を遂行させるため、今後は以下のような推進方策で研究を行う。 研究計画に記載した、①ヒトiPS細胞の準備と分化誘導においては、昨年度に確立した分化誘導方法を用い、特に、継代数の少ないiPS細胞由来の血管内皮細胞を準備する。 研究計画に記載した、②分化細胞の機能解析と糖鎖発現様式の検討においては、昨年度に行うことができなかったアンチトロンビンIII結合能、NO産生能やin vivoにおける血管形成試験などを中心に、分化細胞すべてについて比較検討を行う。また、継代数の少ないiPS細胞由来の血管内皮細胞についても同様に検討することで、由来年齢に反映した結果が得られるか明らかになると思われる。また、分化細胞の一部を使用し、まずはレクチンアレイ法により糖鎖の発現様式を網羅的に解析し、細胞機能の結果と相関するか明らかにする。研究計画の③分化細胞の機能に関連する糖鎖についての検討にあるように、相関のある糖鎖が明らかにされた場合には、標的糖鎖の合成に関わる糖鎖関連遺伝子のRNAi法や、糖鎖合成阻害剤などにより、実際に機能低下に関わっているか検討する。 また、研究計画に記載した、④老化現象についての検討においては、分化細胞が準備でき次第、計画の②や③とは独立に、x線照射や酸化ストレスで老化誘導をかけ、まずは細胞老化の程度の違いについて比較検討する。
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