初代培養血管内皮細胞による細胞老化の検討 ヒトiPS細胞から分化させた血管内皮細胞の性状を比較検討する上で、血管内皮細胞による実験系を確立する必要がある。そこで、実際にヒト初代培養血管内皮細胞を用いて、自然細胞老化やストレス性老化の評価系を確立すべく、検討を行った。ヒト初代培養血管内皮細胞において、約1週間おきに継代を繰り返し、継代ごとに細胞を回収し、定量的PCR法による遺伝子レベルでの老化マーカー(p16など)の確認、ウェスタンブロット法によるタンパクレベルでの老化マーカー(p16など)の確認、さらに老化関連βガラクトシダーゼ活性について発色基質を用いて細胞老化を検討した。その結果、継代数の増加に従い、細胞の増殖性の低下と各老化マーカーの発現に相関がみられ、自然細胞老化をモニターすることができた。また、ストレス性老化については、低濃度の過酸化水素に数時間さらすことで、ストレス刺激後2~3日目には増殖性の低下と各種老化マーカーの増加が確認され、ストレス性老化の誘導が確認された。 さらに、由来の個体年齢を反映した結果が得られるか検討するため、由来年齢の異なるヒト初代培養血管内皮細胞について、上述と同様に細胞老化について比較を行った。その結果、同じ継代数で比較した場合に、由来の年齢に依存して加齢者由来の細胞は増殖性が低いことや、p16の発現や老化関連βガラクトシダーゼ活性が高いことがわかった。少なくとも、今回の実験系において、血管内皮細胞の個体年齢を反映した加齢および老化現象をモニターできることがわかった。
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