研究概要 |
平成24年及び25年の調査参加者は777名(述べ1,217名)であり、全血量が少なかった4名を除く773名から総DNAを抽出した。ApoE遺伝子多型を調べた結果、E4が有りが139名(18.0%)であった。 追跡調査が完了した396名を本研究の分析対象者とした。主な調査項目の平成24年時点の平均値または割合は、年齢が74.5±6.4歳、女性が59.4%、最大歩行速度が2.0±0.4m/秒、最大歩行歩幅が78.3±11.0cm、RBCが450±42万/μL、Alb値が4.2±0.2g/dL、HDL-C値が60.5±15.1mg/dL、MoCA-J(学歴補正)が23.4±4.2点、MMSE得点が28.4±2.3点、ApoE4有りが18.9%であった。平成25年のMMSE得点の平均値は28.3±2.1点であり、追跡期間中にMMSE得点が2点以上低下した場合を認知機能低下(Cognitive Decline;以下CD)有り(17.1%)と定義した。 CDの有無とApoE遺伝子多型との関連性を分析した結果、CD無し群に比べて有り群でE4有りの割合が高かったが(17.7%vs25.0%)、有意差はみられなかった。身体機能(最大歩行速度・歩幅)及び栄養関連バイオマーカー(RBC、Alb、HDL-C)をそれぞれ3分位に分けた上でCDとの関連性を分析した結果、重要な交絡因子を調整した後の最大歩行速度上位3分位に対する下位及び中位3分位のCD有りのオッズ比(95%CI)は1.51(0.75-3.04)と1.24(0.63-2.43)であり、最大歩行歩幅では1.43(0.75-2.86)と1.01(0.51-2.02)であった。RBCでは1.29(0.67-2.50)と1.19(0.61-2.32)であり、Albは1.47(0.68-3.21)と1.64(0.76-3.51)、HDL-Cは0.66(0.36-1.22)と0.42(0.21-1.01)であった。身体機能または栄養関連バイオマーカーとApoE遺伝子多型との間にCDに対する交互作用はみられなかった。身体機能及び栄養関連バイオマーカーの中でCDに対して強い関連性を持つ変数を分析(変数減少法)したところ、最大歩行速度が抽出された(B=-0.47, SE=0.39, P=0.23)。
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