Mowat-Wilson症候群 (MWS)は重度知的障害、特徴的な顔貌と小頭症を3主徴とする常染色体優性遺伝の疾患であり、第2番染色体長腕に座位するZEB2 (別名SIP1)遺伝子のハプロ不全により発症する。本研究ではZeb2-GFPレポーターノックインマウスの初代培養海馬神経細胞を用いたケミカルセレクションを行い、Zeb2の発現量を増加させる化合物の網羅的検索を行う。MWS患者の片方のアリルにある正常のZEB2発現量を増加させる化合物を同定できれば、同化合物の投与により重度知的障害の改善が期待される。 本年度はケミカルセレクションを行う際の蛍光測定条件を確立するため、測定に用いる細胞数と蛍光強度との相関性を検討した。初めにZeb2-GFP cDNAを導入したHEK293細胞を用いて細胞数と蛍光強度の相関性を検討したところ、細胞数増加に伴い蛍光強度が直線性に増加し蛍光測定の感度と測定可能範囲が明らかとなった。次にZeb2-GFPヘテロマウス胎仔 (E17.5)から単離した初代培養海馬神経細胞を用いて同様の解析を行った。細胞は96 well plateで培養し、マイクロプレートリーダーを用いて蛍光強度を測定した。その結果、生細胞の状態では培養液をPBSに置換して測定を行っても野生型胎仔と比較して蛍光強度の差は見られなかった。そこで、細胞を固定した後、抗GFP抗体で染色して蛍光強度の増強を行ったところ、野生型胎仔と比較して細胞数増加(1X104-1X106 cells/well)に伴い蛍光強度が増加する傾向が見られた。しかし、本研究で用いた細胞数では野生型胎仔(コントロール)との蛍光強度の差が小さく、1well当り1X105個以上の細胞数が必要なことが明らかになった。従って、蛍光強度を増加する目的で、ホモマウス同士の交配により得られるホモマウスの胎仔海馬を用いた研究が示唆された。
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