研究課題/領域番号 |
24890305
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研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
住岡 暁夫 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 分子基盤研究部, 室長 (00431320)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 脳神経疾患 / 脂質 |
研究概要 |
アルツハイマー病 (AD) はわが国でもっとも患者数の多い認知症で、根本療法の開発が急務である。ADの病理学的特長のひとつ神経原繊維変化の主要構成成分は凝集したタウ蛋白質である。そしてタウの凝集はADの原因の一つであると考えられている。私はAD研究に取り組むにあたり、タウ凝集の場として脂質二重膜に注目し、脂質によるタウ凝集制御モデルを提案し検証に取り組む。 本研究は以下の研究目標から構成される。I. タウと脂質二重膜の相互作用の検証 II. 脂質によるタウ凝集誘導の検証 III. 細胞膜によるタウの凝集制御の検証。証明された暁にはこの新たなモデルを元に、タウへ結合し凝集制御の鍵となる脂質成分の代謝に注目し、新たな創薬のターゲットにする。 当該年度は、主に研究目標 I. の実施計画を提案し、これを遂行した。生体内のタウの膜局在を確認するため、マウス海馬を生化学的に分画し、膜画分、細胞質画分をSDS-PAGEで泳動し、Western Blotでタウの発現を観察した。その結果、タウの多くが膜に局在していることを確認した。タウと膜脂質の相互作用の可能性を検証するため、大腸菌リコンビナント系から精製したタウとマウス脳から抽出した脂質で調整した人工リポソームを用いてリポソーム浮遊法によって相互作用を観察した。その結果、タウが脂質2重膜に結合することを明らかにした。タウに結合する膜脂質成分を明らかにするため、膜オーバーレイ法によってタウと~30種の膜脂質成分との相互作用を観察した。その結果、新たにタウが特異的に結合する膜脂質成分の同定に成功した。以上の通り、当該年度はタウと脂質二重膜の相互作用を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は研究目標 I. 「タウと脂質二重膜の相互作用の検証」に取り組んだ。その結果、生体内のタウの膜局在を確認し、脳内脂質成分で構成される脂質2重膜とタウの相互作用を明らかにし、タウが特異的に結合する膜脂質成分の同定に成功した。以上の通り、研究目標 I を十分に達成した。そして当初の研究計画どおり、今後これらの成果を元に研究目標II、III.の遂行が可能である。以上の理由から、本研究は「おおむね順調に進展している」。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画どおり、今後は研究目標II. 「脂質によるタウ凝集誘導の検証」 III. 「細胞膜によるタウの凝集制御の検証」に主に取り組む。また、当該年度の研究成果を基礎に研究を遂行する。特にタウが特異的に結合する膜脂質成分に注目しその作用を検証する。 研究目標II. 「脂質によるタウ凝集誘導の検証」膜脂質によるタウ凝集制御を、精製タウの凝集誘導実験で検証する。古典的な誘導剤ヘパリンを陽性群に、注目する膜脂質成分のタウ凝集誘導活性、誘導阻害能を測定する。 研究目標II.「細胞膜によるタウの凝集制御の検証」 細胞膜脂質成分を、脂質の産生・代謝酵素の発現、外部投与などで操作し、タウ安定発現培養細胞株を用いた界面活性剤不溶性タウの測定することで、細胞膜によるタウの凝集制御を検証する。
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