研究課題
【背景・目的】心不全に対する治療法の開発には、成因が多様である心不全の病型を判別し、重症度を定量的に評価するバイオマーカーが必須である。心不全状態の心臓では、B型ナトリウムペプチド(BNP)の前駆体(proBNP)に対するO-型糖鎖の付加量が増加する。この知見をもとに、本研究では、心不全時のタンパク質への糖鎖修飾の変動に注目したグライコプロテオーム解析により心不全関連タンパク質を探索し、新規心不全マーカーの開発を目指す。【方法・結果】高血圧性心不全発症モデルのDahl食塩感受性ラットを使用し、高塩食群(心不全群)と低塩食群(対照群)の左心室組織について比較した。昨年度、糖転移酵素の遺伝子発現解析および左心室組織ライセートの糖鎖プロファイル解析により、心肥大および心不全状態の左心室組織では顕著に糖鎖量が変動することが見出された。そこで、本年度は、変動する糖鎖にどのような特徴があるかを解析した。その結果、心不全群では1)ムチン型O-型糖鎖(disialyl-T)の増加、2)N-型糖鎖コアフコースの減少、および3)O-GlcNAc修飾の変動が見出された。また、2)に関連し、コアフコース脱離酵素の血中酵素活性が心肥大マーカー候補となることが見出された。さらに、これらの糖鎖付加の変動をするタンパク質を同定するため、左心室組織および血漿を対象としたグライコプロテオーム解析を実施した。心不全群と対照群の左心室組織ライセートからレクチンアフィニティ―カラムにより回収した糖タンパク質を、蛍光二次元電気泳動法(2D-DIGE)によって比較解析したが、有意な変動を示すタンパク質は見いだせなかった。一方で、総タンパク質を二次元電気泳動後、総タンパク質染色およびレクチンブロット解析により比較解析する方法では、顕著な糖鎖量変動を示すスポットが見出された。この方法により、左心室組織および血漿から20以上の心不全関連糖タンパク質を同定した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Endocrinology
巻: 154 ページ: 3847-3854
10.1210/en.2013-1291