研究概要 |
本研究では、盲導犬として使用されるラブラドール・レトリーバーの遺伝性疾患の頻度調査を行った。盲導犬集団での遺伝性疾患の頻度と交配個体の遺伝子型が明らかになり、調査した遺伝性疾患について出産を抑制する交配コントロールが可能となった。 ・運動誘発性虚脱1強い運動によって誘発される神経疾患である。174頭の盲導犬を調査して、発症犬が13頭(7.45%)、キャリアが58頭(33.3%)、野生型が103頭(59.2%)であった。運動誘発性虚脱の遺伝子頻度は24.1%で、野生型の遺伝子頻度は75.9%と算出され、運動誘発性虚脱は盲導犬集団に非常に広く浸透していることが明らかになった。遺伝子検査が可能となり、交配コントロールができる目処が付いた。 ・中心核ミオパチー:主に欧米で発症が認められる疾患である。149頭の盲導犬を調査して、発症犬が0頭、キャリアが1頭(0.68%)、野生型が148頭(99.3%)であった。盲導犬集団内にはほとんど浸透していないと考えられた。発症犬の期待値頻度は0.0011%であり、母集団が2,000頭余りの盲導犬集団には発症犬はいないことが明らかになった。 ・進行性網膜萎縮症:遅発性の網膜症で、発症犬は6~8歳で視力を失う。170頭の盲導犬を調査して、発症犬が0頭、キャリアが9頭(5.3%)、野生型が161頭(94.7%)であった。盲導犬協会では眼科検査(表現型の検査)によって、発症犬を選別し交配コントロールを実施している。その結果が顕著に現れていることが明らかになった。発症犬の期待値頻度は0.07%であり、盲導犬集団内からは進行性網膜萎縮症の変異遺伝子はほぼ排除されていると考えられた。 ・ナルコレプシー:発作性睡眠と呼ばれる神経疾患で、アメリカでの発症が報告されている。148頭の盲導犬を調査し、発症犬およびキャリアともに0頭であった。148頭全てが野生型で、盲導犬集団内には変異遺伝子が無いと考えられた。
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