〈研究目的〉根治切除不能又は転移性の腎細胞がん(RCC)・イマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍の治療に用いられるスニチニブは、トラフ値調節が有効であり、活性代謝物SU12662を併せた血中総濃度が50ng/mL以上になると抗腫瘍効果があると報告されている。一方、血小板減少や手足症候群、血圧上昇などの高頻度に発現する副作用によって、減量や中止を余儀なくされることも多いが、それらの血中濃度との関連は未だ明確ではない。このような背景から、安全かつ有効な化学療法を実施するため、血中のスニチニブおよびSU12662濃度モニタリングが必要であると考えられる。そこで本研究では、迅速かつ再現性の高いカラムスイッチングLC/ESI-MS/MSによるスニチニブおよびSU12662の測定法を確立し、副作用出現との関連を精査しつつ、スニチニブ投与患者における抗腫瘍効果の期待できる至適血中濃度維持のための投与支援を実践することを目的とする。 <研究方法>1.カラムスイッチングLC/ESI-MS/MSを用いたスニチニブおよびSU12662の測定法を確立する。 2.スニチニブ投与患者におけるスニチニブおよびSU12662のTDMを実施する。 〈研究成果>1.これまで主流であった操作が煩雑で再現性にも難がある液-液抽出と比較して、迅速かつ再現性の高い前処理用プレカラムを用いたカラムスイッチング技術を用いた測定法を構築することができた。 2.構築できた測定法を用いて、6名のスニチニブ服用RCC患者について血中濃度測定を実施した。抗腫瘍効果の期待できる血中濃度を維持しながら、血中濃度と副作用出現との関連を精査したところ、血小板減少について相関性がある可能性が示唆された。 今回構築した測定法を用いて実施したTDMの結果から、抗腫瘍効果および副作用の両面で、投与量を調節しながら個別に治療を進めることが極めて重要であることが示唆された。今後、長期に治療継続が可能な個別化療法の実施に向け、本測定法を多くの症例のTDMに適用していく予定である。
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