| 研究課題/領域番号 |
24K01780
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| 研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
楠田 哲士 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (20507628)
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| 研究分担者 |
柳川 洋二郎 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (20609656)
堀 達也 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (80277665)
木下 こづえ 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (50724233)
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| 研究期間 (年度) |
2024-04-01 – 2027-03-31
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| キーワード | ツシマヤマネコ / 繁殖 / 保全 / 性ホルモン / 精子 / コルチゾール |
| 研究実績の概要 |
2024年度は,ツシマヤマネコと一部ネコ科の他種を補強に用いて次の研究を実施した。 ツシマヤマネコの糞中の性ホルモン代謝物濃度動態と飼育環境要因の比較では,過去の蓄積検体も含め雌25頭と雄23頭を対象に解析を開始した。雌では卵胞発育指標としてエストロジェン,排卵指標としてプロジェステロン(P4),雄では精巣活動指標としてテストステロン(T)またはアンドロステンジオン(AD)濃度動態を調査した。エストロジェンは,エストラジオール-17β(E2)よりエストロン(E1)の方が本種の糞中に優勢であることが判明し,発情に関する情報を蓄積中である。雄のTまたはAD濃度の月別平均値は,平均気温,最高気温および明期の月別平均値と負の相関傾向にあったため,精巣活動は明期が短く低温期に促進されると考えられた。 雄の精液性状の正常範囲が不明であるため,若齢の繁殖適齢期と考えられる個体で解析することを目的として4施設の7頭からのべ9回の精液採取を行った。採取できた精液性状にはかなりの差があり,総精子数は0.75~27.2×106,運動精子率は0.5~70%であった。うち5回で精液の凍結を行い,融解後の運動精子率は10~35%であった。雌ツシマヤマネコ2頭に加え,スマトラトラ1頭において人工授精のためのホルモン投与を3パターン行った。いずれも糞中P4濃度動態から排卵に至っていたと考えられたが,排卵時期の調整が必要であると考える。 野生順化ステーション飼育下のツシマヤマネコ9頭の糞中コルチゾール濃度を分析し,野生順化過程におけるストレス状態を追跡した。また,野生ツシマヤマネコの糞からツシマジカDNAを調べた結果,55サンプル中14サンプルで検出され,ツシマヤマネコがシカ遺骸を摂食していることが示唆された。さらに,ツシマヤマネコの糞採取地点等の在データ情報を用いて種分布モデリングを行った。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
雌雄ツシマヤマネコの糞を用いた性ホルモン代謝物の分析を進め,繁殖生理状態に関する内分泌データを順調に蓄積できた。また,過去に蓄積してきた糞検体と糞中ホルモン代謝物濃度に関する多くの個体のデータも解析できるように整理を進めた。2024年度は採血可能な状況を利用して雄の血液検体の蓄積も進めることができた。今シーズン以降の繁殖期も含め,複数の観点から繁殖生理に関する解析を進められる基盤が整いつつある。 のべ9回の精液採取を実施できたが,精液性状については季節性が認められた。造精機能に問題があると推察される個体も含まれたこと,採取時期が遅れたため一部精液採取を実施できない施設があったことから,種全体と繁殖歴のある群の範囲情報を得るためにさらなる実施が必要である。凍結保存方法の条件の検討では融解後に良好な運動性を示す回もあったことから,現在の凍結保存方法をさらに改良することで問題がないと考えている。人工授精のためのホルモン投与は,個体の状況にあわせたプロトコルで排卵に至っているため,基本となる方法を示せたと考えられる。経腟子宮内人工授精技術開発のため,ツシマヤマネコの雌性生殖器を2個体入手したため生殖器内の分析を進める準備が整ってきた。 野生順化ステーション個体の糞中コルチゾール濃度測定は完了した。今後は飼育環境等とストレス変化の関係を詳細に分析する。生息域内では,想定より多くの糞を入手できた。現状の分析データからは,シカの個体数増加によってツシマヤマネコの食性が変化している可能性が示唆された。また,種分布モデリングによりツシマヤマネコの好適生息環境の予測も行った。これらの研究成果について国際学術会議および国内学会にて発表を行った。 以上のように大きく進展した部分と,一方で繰越金発生理由に記載した通り一部次年度に回した分析もあったため,全体としてはおおむね順調,と評価した。
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| 今後の研究の推進方策 |
ツシマヤマネコの繁殖成績が芳しくないことから,発情期や発情周期,排卵の有無や妊娠もしくは妊娠損失の観点で考察を進める。ツシマヤマネコの糞中の性ホルモン代謝物濃度動態に関する情報の解析基盤が整いつつあるため,それを活用して繁殖生理状態と繁殖不成功の段階の検討を行う。また,同亜種で大陸側の別個体群であるアムールヤマネコおいて,繁殖の順調な雌雄ペアがいるため,その個体を対象とした糞中の性ホルモン代謝物濃度動態の分析とホルモン剤投与による効果の検証を行う。 効率の良い精液採取を行うために,アムールヤマネコで精子数増加の報告がある精液採取時のオキシトシン製剤投与の効果を試みる。また経腟子宮内人工授精法をヤマネコ類に導入するべく細径の内視鏡を購入したため,屠体由来雌性生殖器の画像診断情報を基にアムールヤマネコでの実施を経て,ツシマヤマネコで行うことを計画している。人工授精のためのホルモン投与プロトコル検討については、継続するものの繁殖適齢のツシマヤマネコを人工繁殖に供する数が限られるため,別種における検討数の増加を予定している。 野生順化ステーション個体において,ストレスと環境変化との関係を分析する。ツシマジカ食害による生息域内環境への影響に関しては,種分布モデリングによって得られた好適環境情報やツシマヤマネコの食性解析結果を踏まえて,複数の地点を選定し,各地点間の植生および餌環境について詳細を分析する。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
ツシマヤマネコの精液採取の開始時期に関して,2024年度は個体および飼育施設の状況により全体的に遅くなり,精液採取を行うことができなかった例が一部あった。2025年度は,前年度繰越分も含めヤマネコ類からの精液採取および精液性状の解析を進めていく計画である。 ストレスホルモンの分析に関して,2024年度はツシマヤマネコの糞を想定していたよりも多く採取することができた。一方で,DNAおよびストレスホルモン抽出に時間を要したことから,それ以降の分析費を次年度に繰り越した。2025年度前期中にはそれらの分析を進めると共に,再度対馬に渡航し,現地調査も進める計画である。
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