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2024 年度 実施状況報告書

ヒトの言語機能の計算論的分析: 内省的文法性判断と範疇文法の橋渡し

研究課題

研究課題/領域番号 24K16077
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

谷口 雅弥  国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 基礎科学特別研究員 (80968991)

研究期間 (年度) 2024-04-01 – 2029-03-31
キーワード部分構造論理 / 線形文法 / 有限言語 / 正規文法 / 範疇文法
研究実績の概要

本研究は、当初ヒトのことばの計算モデル構築を目指し、弱文脈依存言語を研究対象とすることを計画していた。しかしながら、研究の過程において、想定外ながらも文脈自由言語より弱い表現能力を持つ形式言語に関する重要な知見を得るに至った。具体的には、線形文法に正確に対応する部分構造論理を新たに発見し、その構造的性質を明らかにした。加えて、より制限されたクラスである正規言語や有限言語に対応する部分構造論理を特徴づけを与えた。これらの成果は、形式言語の論理的基礎づけに新たな視点を提供するものである。
分野を横断し研究成果を積極的に発信した。国内関連学会にて範疇文法との関連性に関する研究発表を行った。特に、数学基礎論若手の会においては、メンターとして指導する学生が研究成果の発表を行うに至り、研究指導の成果も得られた。
研究コミュニティへの貢献も進んだ。関連分野の活性化および若手研究者の育成を目的とし、ロジックウィンタースクールを主催、多数の参加者を得て活発な議論の場を提供した。加えて、他分野の研究者との連携を新たに開始。東北大学自然言語処理研究グループと連携し、最先端の大規模言語モデル(LLM)における文法的複雑さについて議論している。

これらの研究活動および普及啓発活動を通じ、計画の一部変更はあったが、形式言語の論理的基礎づけ研究に新たな側面から貢献し、国内外でのプレゼンスを高め、研究領域の拡大を実現することができた。

現在までの達成度
現在までの達成度

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、ヒトのことばの計算モデル構築を目的とする。現在までの進捗状況として、この目的に向けた基礎的な探求を進め、非可換論理と可換論理の中間に位置する特定の部分構造論理を発見した。これはヒトのことばの論理的特性を理解する上で重要な第一歩となる成果である。
また、当初計画になかった、ヒトの言語以下の文法クラスにおいて成果を挙げた。特に、理論計算機科学で注目されている線形文法に正確に対応する部分構造論理の構築に成功した。さらに、この成果を基盤として、より単純なクラスである正規言語や有限言語に正確に対応する部分構造論理の存在とその性質を解明した。これらの発見は、形式言語論理における新たな統一的視点を提供し、学術的貢献を示すものである。
研究成果の発信とコミュニティとの連携も活発に行った。国内の学会等にて、発見した部分構造論理に関する一連の研究成果を発表した。関連分野の研究交流・若手育成のため、ロジックウィンタースクールを主催し、議論の活性化に貢献した。加えて、他分野との連携研究を積極的に推進し、東北大学自然言語処理研究グループと大規模言語モデル(LLM)の文法的複雑さについて議論を開始した。さらに、数理論理学の知見を活かし、LLMを用いた数学の証明探索に関する新しい研究領域の開拓に地域を越えて着手した。
以上の進捗は、当初の目的に向けた基礎固めと、形式言語論理における主要な成果、そして分野横断的な連携による研究領域の拡大を示すものである。

今後の研究の推進方策

本研究は、当初の目的であるヒトのことばの計算モデル構築を引き続き目指す。これまでの研究進捗を踏まえ、今後は以下の推進方策に基づき研究を展開する。
まず、ヒトのことばの論理的構造に関する研究を深化させる。この論理体系の理論的な性質(決定可能性、計算量等)を厳密に分析するとともに、形式言語論理において得られた主要な成果、特に線形文法、正規言語、有限言語に対応する部分構造論理の研究をさらに発展させ、star-free言語の解明に迫る。これらの成果は査読付き論文として学術誌への投稿を行い、広く発信する。また、これらの論理体系がヒトのことばのモデル化以外にいかなる貢献をなしうるか、その応用可能性についても積極的に探求する。
さらに、これらの発見した部分構造論理体系に対し、新たに様相演算子を導入する研究に着手する。様相演算子を導入することで、計算における状態変化などを捉える表現力を獲得できる。この研究は、国際的に活発に進められている様相演算子付き部分構造論理の研究分野への参入を意味し、本研究の学術的フロンティアを拡大するものである。
また、研究コミュニティとの連携を一層強化する。現在進行中の東北大学自然言語処理研究グループとのLLMにおける文法的複雑さに関する共同研究を発展させる。これらの連携を通じ、形式言語理論・数理論理学と最先端AI技術との接点を探る。言語学の研究者との交流も図り、多角的な視点からヒトのことばの理解に迫る機会を模索する。国内外の主要な会議での発表を通じて、研究成果の普及と分野活性化に貢献する。
これらの活動を通じて、本研究はヒトのことばのモデル構築に向けた理論的・実証的基盤を固めつつ、形式言語論理における学術的に価値ある成果と、他分野との積極的な連携による新たな研究可能性を開拓する。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由: 当該年度においては、複数の共著者との密接な共同研究により多くの成果発表を行う機会を得た。これらの発表においては、研究代表者自身が発表者となるだけでなく、共著者が筆頭著者として発表を行うケースや、共著者の所属研究機関からの旅費で発表するケースが多く生じた。そのため、発表に伴う旅費や参加費について、本研究費から支出する機会が想定より少なくなり、共著者側の研究費等によって支弁されることが多かった。結果として、本研究費における旅費等の執行額が当初の計画を下回り、次年度使用額が生じる状況となった。
次年度使用計画: 生じた次年度使用額については、計画に基づき、本研究のさらなる推進のために活用する予定である。具体的には、研究代表者自身が国内外の関連分野の学術会議やワークショップに積極的に参加し、最新の研究動向を収集するとともに、本研究で得られた成果について口頭発表やポスター発表を行う。そのための学会参加費および旅費に、当該次年度使用額を充当し執行する。これにより、研究成果の国際的な発信を一層強化し、他の研究者との建設的な議論を通じて、研究計画の当初目的達成に向けた研究を強力に推進する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2025 2024

すべて 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Finiteness and Cofiniteness of Languages Recognized by Constant-Precision Floating-Point Transformer Decoders2025

    • 著者名/発表者名
      Nao Negishi
    • 学会等名
      The 31st Annual Meeting of the Association for Natural Language Processing
  • [学会発表] 弱いランベック計算への招待: 論理と形式言語2025

    • 著者名/発表者名
      谷口雅弥
    • 学会等名
      Logic Winter School III
  • [学会発表] Descriptive automata-computability via formal languages2024

    • 著者名/発表者名
      Yusaku Nishimiya
    • 学会等名
      数学基礎論若手の会2024
  • [学会発表] First Heuristic Then Rational: Dynamic Use of Heuristics in Language Model Reasoning2024

    • 著者名/発表者名
      Yoichi Aoki
    • 学会等名
      the 2024 Conference on Empirical Methods in Natural Language Processing
    • 国際学会
  • [学会発表] Lambek Calculus and Regular Grammar2024

    • 著者名/発表者名
      谷口雅弥
    • 学会等名
      Symbolic Logic and Computer Science 2024
  • [学会発表] Lambek Calculus and Context-Free / Linear / Regular Grammars2024

    • 著者名/発表者名
      谷口雅弥
    • 学会等名
      Computation, Language, and Logic Workshop , Onjuku
  • [学会発表] Substructural Logic Weaker than Product-free Lambek Calculus.2024

    • 著者名/発表者名
      谷口雅弥
    • 学会等名
      数学基礎論若手の会2024

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公開日: 2025-12-26  

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