| 研究実績の概要 |
2024年度はテーマ1に挙げた寛骨臼移動術(TOA)における寛骨臼骨片の矯正に対する生体力学的観点からの至適骨片移動位置(Target zone)の探索、テーマ2に挙げたTOAが股関節不安定性に与える影響について解析を行った。テーマ1では、有限要素法を用いた12パターンの仮想TOAシミュレーション(Lateral center-edge angle [LCEA]を30°, 35°, 40°に側方回転し、前方回転を0°, 5°, 10°, 15°加えた計12通り)を行い、LCEA 30°ー35°かつ15°の前方回転を加えたときに関節接触圧の正常化しやすいことが明らかとなった。術後に日常生活動作に必要な可動域を考慮するとTarget zoneは患者によって異なることがわかった。また、Head-neck offset ratioが小さい患者では可動域制限が生じやすいことが明らかになった。これらの知見から患者共通にTarget zoneが存在するのではなく、患者個々に合わせた骨切りを行う必要があることが分かった。テーマ2では、TOA前後の臥位および立位X線画像を用いて、3D-2Dレジストレーションを行い、大腿骨頭中心と寛骨臼中心の相対的移動距離を算出することで股関節不安定性を評価した。その結果、TOA後に骨頭移動は有意に減少し、微小不安定性の改善が示された。ただし、正常股関節と比較すると依然として骨頭移動量は大きく、術後にも関節不適合が残存する可能性が示唆された。特に、術前のARO(Acetabular Roof Obliquity)が大きい症例ほど、立位での外方移動が大きく、矯正の際には立位X線による評価の重要性が示された。今後はこれらの結果を踏まえて、臨床成績を加味し、総合的な矯正アルゴリズムを確立する予定である。
|