研究課題/領域番号 |
25000005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
相田 卓三 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授 (00167769)
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研究分担者 |
伊藤 喜光 東京大学, 大学院工学系研究科, 助教 (00531071)
大黒 耕 東京大学, 大学院工学系研究科, 助教 (60614360)
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研究期間 (年度) |
2013-04-26 – 2018-03-31
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キーワード | 超分子化学 / 複合材料・物性 / 物理的摂動 / 異方性 / 巨視的スケール |
研究実績の概要 |
本プロジェクトでは、生体内の組織化に学び、「物理的摂動の存在下での組織構造の形成」に焦点をあて、分子スケールからナノ・メゾスケールを超え、巨視スケールにいたる高度に制御された階層的異方構造からなるソフトマテリアルを設計するとともに、その異方性に由来する格別な物性・機能の開拓を目指す。具体的には、(1)『高速電場応答強誘電性カラムナー液晶』の開拓とメモリー素子としての初の実験的検証、(2)『イオン性無機ナノシート間の二次元静電反発』によるアクアマテリアルの異方的力学特性、(3)グラフェン高濃度分散系を用いる『構造異方的ソフトナノカーボン』の創製と物性開拓、の3つを遂行する。 今年度は主に次の3つの成果について報告した。 1, 『高速電場応答強誘電性カラムナー液晶』の開拓 : これまで当研究室で開発してきた強誘電性カラムナー液晶に10-30W%の割合で新たに開発した材料を混ぜ込むことで、電場応答スピードを著しく向上することに成功した(0.001Hzから0.1Hz)。さらに応答スピードに加え、分極の大きさも増大し、液晶材料で最も大きい自発分極の実現に成功した(6uC/cm)。 2, 『イオン性無機ナノシート間の二次元静電反発』による異方的アクアマテリアル : 代表的な感温性高分子であるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)を用い、磁場配向した酸化チタンナノシートを内包するヒドロゲルを作成(手法は平成25年度に確立)したところ、ゲル内外での水の出入りを必要とせず、大きく、速く、異方的なの変形を繰り返すことが可能なヒドロゲルアクチュエータが得られた。 3, グラフェン高濃度分散系を用いる『構造異方的ソフトナノカーボン』 : これまで当研究室で開発されてきたグラフェン分散系を用いてグラフェン-MoSの混合剥離系を調整し、Liイオン電池の負極材料へ応用した。その結果、MoSの使用率がこれまで報告されている最高値14%から72%へと大きく工場することを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
テーマ2「イオン性無機ナノシート間の二次元静電反発による異方的アクアマテリアル」における成果は当初の計画以上のものであった。ヒドロゲルアクチュエータはこれまでに数多く報告されているが、その動作は「ゲル内外での水の出入りによる高分子編目の膨潤・収縮」によるため、速度が遅く、等方的であるために力が各方向に分散し、繰返し耐性も低い。今年度開発されたヒドロゲルアクチュエータは、これとは全く異なる、予想外の機構により駆動する。すなわち、PNIPAの相転移初期におこる「水分子の運動性の変化」が「系全体の誘電率の変化」ならびに「酸化チタンナノシート間の静電反発増強」を引き起こす。その動作は既往のヒドロゲルアクチュエータの抱える問題をすべて解決しており、今後、研究計画以上の発展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は平成26年度に得られた成果を元に研究を遂行していくが、セレンディピティーを大切に新しい学理を追求していく。 1, 『高速電場応答強誘電性カラムナー液晶』の開拓 : ドメインサイズをさらに小さくしていき、さらなる応答スピード向上を目指す。また関連してどの程度小さなドメインで自発分極が保持されるのか? 究極的にはカラム1本1本がメモリー素子になるのかを調べる。 2, 『イオン性無機ナノシート間の二次元静電反発』による異方的アクアマテリアル : 今年度発見されたヒドロゲルアクチュエータの動作原理は、温度以外の様々な外部刺激に対する応答においても適応可能であるはずである。今後、pH・光・化学反応などに応答するヒドロゲルの開発を行う。 3, グラフェン高濃度分散系を用いる『構造異方的ソフトナノカーボン』 : 得られたグラフェン-MoS混合剥離系を用いてLiイオン電池を作製し、その評価を行う。また、剥離のメカニズムに関してその分子的メカニズムを探求していく。
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